第四章
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「あの人のお考えでは」
「成程」
凌はそのとてつもない重さのフライパンを見つつその若いシェフの言葉に答えた、とにかくメタルは怪力であった。
それは一緒の店にいてよくわかった、しかも怪力だけでなく繊細な料理も得意で性格もそうだった。繊細な気遣いも備えたプロだった。
その彼にだ、ある日の昼だ。
凌はメタルが作ってくれた賄いを店の中で彼と共に食べつつだ、彼に問うた。
「あの、メタルさんはトレーニングを欠かさないけれど」
「そのことね」
「それはどうしてなんですか?」
「ワテクシも最初は非力だったのよ」
メタルは賄いのピザを食べつつ同じものを食べている凌に答えた。
「とてもね」
「そうだったんですか」
「シェフになってからもね。けれどね」
「それでもですか」
「力がなくて。中々フライパンを動かせなくて困って」
それでだったというのだ。
「これでは駄目だと一念発起してなのよ」
「トレーニングをはじめられて」
「そう、そして今みたいになったのよ」
「力をつけられたんですか」
「この通りね」
何処かのボディービルダーの様にだ、メタルは座ったままでやはり優雅な表情でポージングをしつつ凌に話した。
「毎日トレーニングをしてね」
「毎日ですか」
「毎日出勤前にしているわ」
トレーニングをというのだ。
「そうしてね」
「その力ですね」
「そうよ、今ではね」
「あの重さでないとですか」
ジャガイモの箱なりフライパンなりのだ。
「駄目なんですね」
「そうなったのよ」
「そうですか」
「こうなるまでにはね」
「毎日のトレーニングですね」
「腕だけじゃないわよ」
その逞しい腕だけでなく、というのだ。
「腹筋も足腰もね」
「どれもですね」
「そう、鍛えてこそなのよ」
力がつくというのだ。
「身体全体をね」
「大変ですね」
「しかも毎日よ」
トレーニングは欠かしてはならないというのだ。
「二時間かけてね」
「二時間ですか」
「ランニングもしてね」
そしてその他のトレーニングもというのだ。
「そうしてよ。あと力加減も難しいわよ」
「あっ、下手に力を入れますと」
「お豆腐とかプリンとか柔らかいものを壊しちゃうからね」
「メタルさん繊細なお料理も得意ですけれど」
「力加減は気をつけてね」
そうした料理を作る時はというのだ、柔らかい食材を使う時は。
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