27:ビューティフル・ライフ
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に俺は目を丸くしてしまう。
「ハーライン、お前……」
そんな俺を、彼はその湛えた微笑で、まっすぐと見つめてきた。
「この世界に来て、私は考えた。そうして培ってきた私のこれまでの人生は終わり、これからの私は半死半生同然なのか、と」
そしてすう、と軽く息を吸って、
「答えは――……否!!」
と、清澄な声で宣言した。
「これも立派な私の人生の続きなのだ。過去の私は医学へと邁進し、今の私は今まで蔑ろにした分の享楽を存分に満喫する。……いつか現実へと戻ってきたら、胸を張ってこの世界で過ごした日々を誇る。そしてまた私は、私の思うままに人生を歩んでゆく。――それが私の結論だ」
そう言った彼の顔は清々しく、嫌味を全く感じさせない、自然な好漢のそれだった。
「…………お前、その素の顔のままでいれば、ついてくる女性も大勢いたんじゃないか……?」
ふと、そう吐露してしまうほどに、今のハーラインは男の俺から見ても……素直に、格好が良かった。
俺の言葉に、ハーラインは苦笑しながら片淵眼鏡を掛け直し……
――その時には、いつもの優男の顔に戻っていた。
「フフッ、言っただろう? 私は女性とのフレッシュな談笑を好む。素の顔で単純にモテただけでは、つまらないではないか!」
「うわ、ムカつく……」
「アッハッハッハ、恨むなら不公平な神を恨みたまえよ? フフフッ……」
ひとしきり笑いあい、数秒の沈黙が流れる。
「……なぁ、ハーライン。お前、なぜ俺にリアルの事を話してくれたんだ? それに聞きようによっては、死神の疑惑が深まらんでもない内容だったぞ……?」
疑惑が深まる、といっても、これはあくまで理論的なものではなく、俺の感情的な意味で、だ。今の会話に彼と死神と結びつくものは何もない。が、こうして彼の過去を知ることが出来たということは、考察材料が増えたという事だ。それによって心なしか、という、ただの俺の偏見だ。
俺の問いに、あくまでいつもの笑顔のままハーラインは答えた。
「それも、もう言っただろう? 疑惑が深まろうが構わない。……君は、仲間想いで秘密を守れる人間だ。これでも私は元・医者の卵なのでね。カウンセリングの延長で、人を見る目はあるつもりだよ。それに、単に私は君という人間が気に入ったから、という理由もある」
「……そりゃどうも」
「だが、大事な事だからもう一度復唱するが……私もそのシュミはないからね! か、勘違いは御免なのだよっ?」
「改めて言われるまでもないって……誰が得するんだよ、そのツンデレは」
「フフ、アハハッ……確かに、そうだね」
そして、幾度目かの俺達の笑い声が薄く森に木霊した。
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