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ソードアート・オンライン リング・オブ・ハート
27:ビューティフル・ライフ
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「違うよ。確かに、ただ針を縫うことを続けていてもスキル値は少しずつ上がるし、刺繍も防具装飾の一環でしないこともないのだがね。だが、私の本業はあくまで武器装飾……鍛造や彫刻が本領なのだよ」

「なら、なぜそんなことを? 単なる暇つぶしにも見えないが……」

「ふむ……う〜ん、そうだね……」

 ハーラインは何を思ったか、思い悩むように顎に手を当て、それからずっと俺を微笑の顔のままじっと俺を見つめてきた。

「……………」
「……………」

 …………その時間がやたら長く、なんだか背筋にゾワゾワと冷たいものが這い始める。

「あのさ……言っておくけど、俺にはその手のシュミはないぜ……?」

「ちょ、なんでそうなるんだね!? 私にだって微塵たりともないよ!」

 相変わらず、なかなかいい反応と切れ味のツッコミだ。

「ただ……私のことを、君に話しても大丈夫かな、と逡巡していただけだよ」

「お前のこと?」

 尚もハーラインは、俺をどこか思案顔で見ていたが、

「……ま、君にならいいか。なんだかんだでさっきは私達を率先してモンスターから守っていたし、なにより君はまだ、私の情報を他者に漏らしていないからね。それらを(かんが)みると、君はなかなかに私の信頼に足る少年ということになるだろう」

 やがてそう言って……ハーラインは、キッチリしたシャツの首のボタンをだらしなく一つ外し……
 ――そして彼は、ふっ、と顔の力を抜いて薄く微笑んだ。
 なまじ顔が整っているので、それだけで今までと雰囲気がガラリと変わった。


「――私はね……あっちでは、医学生だったのだよ」


 あっち、というのは現実世界のことで間違いないだろう。

「……おい、そんなことを俺に話してもいいのか……?」

 俺の問いにハーラインは鷹揚(おうよう)に頷いた。

「うむ。私から話したくて話しているんだからね。まぁ、愚痴を聞いてやるつもりで聞き流してくれれば嬉しいよ」

 ハーラインは片淵眼鏡を外し、ポケットから新しい布を出して丁寧にレンズを拭き始めた。

「……私は大きな大学院に入り、医学について日々勉学を重ねていた。こう見えても成績と医療功績は院内トップを譲ったことはない、かつては医学界の新星と呼ばれ期待されていた優等生だったのだよ?」

「……すごく意外だな。俺は三流雑誌モデルか、ホストあたりじゃないかと思ってたよ」

 ハーラインは苦笑を一つ漏らしつつ、話を続ける。

「そんな中、ナーヴギアの登場は、ゲームとは全く関係のない医学界でも大きな波紋を呼んだよ。その諸々は長く複雑な話になるので割愛するが……私達の医学チームも、それをまずは臨床体験してみることになった。その中で、たまたま選ば
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