第三章
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「だからね」
「私嫌われてないのね」
「勉強は全然出来ないけれどね」
このことを言うこともだ、千代子は忘れなかった。嫌味ではあるがそれと同時にハッパをかけるという意図もあった。
しかしだ、勝恵はこう言うのだった。
「別にいいから、お勉強の方は」
「そっちはなのね」
「全然大丈夫だから」
「それで何処かの高校に入ってなのね」
「後は肉体労働系の仕事に就職するかね」
「あんたにそっくりだったっていうひいひいお祖母ちゃんみたいに？」
「木樵になるか阪神に入団するから」
笑ってこう言うのだった。
「宜しくね」
「宜しくじゃないわよ、全く」
「だって私本当に勉強嫌いだから」
「けれどたまにはしなさい」
今度は説教だった、それも純粋な。
「そのまま逆トップばかりでもいいの？」
「私的には全然」
とにかく悪びれないどころかあっけらかんとしている勝恵だった。
「平気だから」
「やれやれね、そんなことでもいいのねあんたは」
「だって世の中勉強だけじゃないでしょ」
「それもそうだけれど」
「まあお姉ちゃんはお姉ちゃん、私は私でね」
「あんたはスポーツっていうのね」
千代子は呆れている目で勝恵を見つつ彼女に返した。
「そう言うのね」
「そういうことでね」
「怪我にだけは気をつけるのよ」
これが姉の言葉だった。
「精々甲子園で投げまくって阪神を日本一にするのね」
「お姉ちゃんがケアしてね」
「怪我したら許さないからね」
妹にこう返して教科書を開くのだった、とにかく勝恵は勉強をしなかった。だが運動神経と頑丈さは並外れていてしかも天真爛漫な性格で人気も高かった。
しかし成績はどうにもならない、勉強を全くしないからだ。
だがだ、中学三年になった勝恵に進学志望先を言われてだ、昌代は最初は驚きその後で納得した顔になってこう言った。
「ああ、そうね」
「うん、先生にアドバイスされてね」
「そっちに行くのね」
「うん、八条学園のね」
その高等部のというのだ。
「スポーツ特待生でね」
「あの学校に入るのね」
「あの学校スポーツ科もあるから」
それで、というのだ。
「あそこに入るわ」
「そうするのね」
「これならいいわよね」
「ええ、考えたわね」
納得して言う昌代だった。
「先生が」
「じゃあそこ受けるわね」
「ペーパーテストは大丈夫なの？」
「何でも入試問題はそれこそね」
「それこそ？」
「名前書けるだけでよくて小学校一年位でいけるっていうから」
「じゃああんたでも大丈夫ね」
流石に勝恵も自分の名前位は書ける、小学校一年生位の学力もある。
それでだ、昌代も安心して言うのだ。
「それじゃあね」
「受けていいわよね」
「ええ、いいわよ」
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