第三章
[8]前話 [2]次話
「わかるのよ」
「わかる?」
「そう、背中を見ればね」
テレサはくすりと笑ってだ、祐也にこう言うのだ。
「その人の背中をね」
「背中って?」
「そう、祐也もよく見ればわかるわ」
彼もだというのだ。
「背中をね」
「言ってることがわからないけれど」
テレサの笑みを浮かべての言葉にだ、祐也はというと。
飲みつつ眉を顰めさせてだ、こう返したのだった。
「どういうことかな」
「別に羽根とかは生えていないわよ」
「それはね」
わかるとだ、祐也も返した。
「幾ら何でも天使でも悪魔でもないから」
「その時になればわかるから」
「結婚式の時に」
「私と私の家族や親戚の人達を他所者扱いするかどうかは」
「それじゃあ結婚式の時に」
「ええ、見ましょうね」
「それじゃあね」
「あと式はね」
続いて結婚式の話だった、テレサはこのことについてこれまで以上に明るい顔になって祐也に対して言った。
「和式にしましょう」
「じゃあ金襴緞子着るんだ」
「あれ着るの夢だったのよ」
それだけに、というのだ。
「だからね」
「俺も和式で」
「そういうことでね」
「テレサ和風好みだしね」
だから今も和風の居酒屋で飲んでいるのだ、それも焼き鳥で日本酒をだ。生まれはともかくとしてテレサは完全な日本人だ。
しかしだ、日本人でもだ。スペイン生まれだからというのだ。
「私の生まれ、祐也の親戚の人はどう思うかしらね」
「邪険に扱われないといいけれどね」
「京都人って性格悪いの?」
「評判はよくないね」
関西の他の府県からはだ、それも京都以外の全ての府県からだ。
「ぶぶ着け食うていきなはれとか」
「ぶぶ漬け?」
「お茶漬けだよ、これってね」
「食べて行けって意味じゃないのね」
「早く帰れっていう意味なんだ」
京都人独特の言い回しだ、大阪にもないものだ。
「食べると嫌な顔をされるんだ」
「大阪にもスペインにもないやり方ね」
「大阪人はかなりダイレクトに言うからね」
「スペイン人もね」
「けれど京都は違うんだよ」
そのお茶漬けについてもだ。
「あと座布団を半分出して玄関に敷いたり箒を逆さまに立てたりね」
「全部お茶漬けと同じ意味なのね」
「そういうところなんだよ、京都は」
「性格悪いっていうのね」
「だから厄介なんだ」
「結婚式でも」
「何かとね」
そうだというのだ。
「本当にね」
「わかったわ、私もこれまで京都のことは殆ど考えてこなかったけれど」
「大阪だけだったんだ」
「あと神戸とか奈良にね」
そちらに集中していたというのだ。
「和歌山にもなのよ」
「それでも京都は何だ」
「古都なのは知ってたけれど」
それでもだったというのだ、テレサはこれまで。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ