第六章
[8]前話
「天麩羅は欧州から、麺類は中国から伝わったもので」
「そうして日本に定着したものですね」
「はい、そうですから」
それでというのだ。
「それは日本でも同じですね」
「ですから」
「美味しければですね」
「どの国においてもです」
定着するというのだ。
「そうなります」
「そういうことですね」
「そうです、本当に」
また言うティオテだった。
「私は素晴らしい料理を祖国に伝えられました」
「そしてそのことにですね」
「喜びを感じています」
こう笑顔で言うのだった。
「心から」
「そうなのですか」
「新島さんに深く感謝しています」
「いえ、感謝はいいです」
新島は苦笑いでティオテに答えた。
「私はただご馳走しただけですから」
「そうですか」
「しかし。あの料理がコートジボアールでも親しまれると思うと」
それは、というのだ。新島も。
「私も嬉しいです、むしろ」
「むしろ?」
「私の方からティオテさんにお礼を言いたいです」
そうだというのだ。
「天そばと天ざるをコートジボアールの方々に紹介して頂いて」
「だからですか」
「はい、有り難うございます」
ティオテに対して深々と頭を下げての言葉だった。
「まことに」
「いえ、お礼はいいです」
今度はティオテが言うのだった、この言葉を。
「私はただ紹介しただけですから」
「コートジボアールの方々に」
「はい、ですから」
それ故にというのだ、そして。
ここでだ、ティオテはあることに気付いた。そうしてそのあることを新島に述べた。
「ここは私達二人が感謝するべきでしょうか」
「と、いいますと」
「日本の料理という文化に」
それに対してというのだ。
「感謝すべきでしょうか」
「天そば、天ざるのあるですね」
「そうです、日本の料理にそうしたものがなければ」
「こうしたことにもならなかったので」
「そう思うのですがどうでしょうか」
「言われればそうですね」
その通りだとだ、新島もティオテの言葉を受けて頷いた。そうしてだった、
そのうえでだ、彼はティオテにこう述べた。
「ではこれから」
「天そばをですね」
「天ざるでもいいですか」
「それを食べにですね」
「行きましょう」
こう笑顔で話してだ、そしてだった。
二人で天麩羅そばを食べに行くのだった。それのある日本文化に深く感謝しながら。
天そば 完
2014・6・25
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