第一章
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鉄と血
ウィーンで占い師をしているロマニの老婆エンヤは近頃寝覚めが悪かった、それで共に住んでいる孫娘のロンダに対して朝食の時にパンを食べつつこう言った。
「最近おかしな夢を見るよ」
「どうしたの、一体」
ロンダも占い師だ、まだ若いが。見れば自分と若い時そっくりの茶色の長い癖のある髪と鳶色の目だ。背は高くすらりとしていて鼻が高い。
その孫娘にだ、こう言うのだった。
「家の北の方でね」
「北で?」
「そうだよ、あたしがそこに行ってね」
「それでどうなるの?」
「広場があってそこから赤い血が湧き出ていて」
「広場から?」
ロンダは祖母に思わず問い返した。
「そこからなの」
「そうだよ、その横からは鉄が湧き出ていて」
「血と鉄?」
「色々な石があった広場があっという間にその二つで覆われていったんだよ」
「不吉な夢ね」
「いや、それがね」
不吉かというとだった、エンヤはしわがれた声でロンダに話す。
「別になんだよ」
「そうしたものは感じな方の」
「おかしな夢だと思うだけなんだよ」
「そうなのね」
「ただ、あまりにもおかしな夢でね」
それで、というのだ。
「最近妙に思って寝覚めが悪いのよ」
「そういうことね」
「どう思う?この夢は」
同業者であり弟子でもある孫に問うた。
「御前さんは」
「北よね」
このことからだ、ロンダはエンヤに答えた。
「北っていうと」
「このオーストリアの北はな」
「バイエルンがあって」
そしてだった。
「あとプロイセンね」
「あの国と関係あるかのう」
「そうかしら、そして鉄と血ね」
「この二つじゃ」
「随分と物騒ね」
特に血について言うロンダだった。
「それだと」
「そうじゃな、血が流れる話か」
「血が流れる話といったら」
「そして鉄じゃ」
「鉄っていうと」
ロンダは次にこのことについて考えたのだった。
「何かしら」
「鉄は何かじゃな」
「鉄は色々使うけれど」
「わし等にしてもな」
「ええ、本当の身の周りのものに」
あらゆることに使う、それが鉄だというのだ。
「何かとね」
「しかもその二つが様々なものがあった広場を覆ってしまったのじゃ」
エンヤは孫娘にまたこのことを話した。
「不思議じゃな」
「かなりね」
「わからんか、御前さんにも」
エンヤは自分でもわからないとも言った。
「この夢の意味は」
「少なくともいいことが起こりそうにはないわね」
「わしもそれはわかるがのう」
「それが具体的に何かまではね」
「わからぬな」
「どうにもね」
二人共そこまではわからなかった、こうした話をしてその日も仕事に出て占いで糧を得た、少なくとも二人が食べられる
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