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王道を走れば:幻想にて
第三章、終幕:騎士騎士叙任式
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って普通、二頭の馬に牽引されて偶に御者がぴしっと鞭を叩いており、馬は息を漏らしながらそれに応えている。
 王都までに至る主要な街道は大体が舗装されており、身体が痙攣しているのかと思うほどの揺れは無いが、揺れはする。馬車童貞であれば吃驚してしまうほどの揺れを、男は天幕を張った駕籠に座しながらゆったりと、その鳩のような顔を覗かせた。

「いやぁ・・・久しぶりの王都だなぁ・・・相変わらず、見蕩れるほどの全景だ」

 視線の先に聳える王都の全景。高々とした二重の城壁に視界が遮られているが、その中には広々とした二重の街並みが広がっているであろう。王国最大の都市は近付くにつれて輝きを増しているようであり、見る者に思わず感嘆の念を与えてしまうほど。男が見遣る北門からの光景もまた壮麗であった。
 男は座上の小さな籠からたわわと実った葡萄を摘むと、ひょいとそれを口に頬張った。

「ん〜・・・旨い。トマトよりもね」

 果肉の締りのある甘みを愉しみ、ついでとばかりに皮と種の渋みと硬さすら味わってしまう。宝玉の味に態々粗野な石を混淆するという野暮を働いた男は、しかしその暴挙を全く意に介さずに葡萄を頬張り続けていた。
 その時、御者が不意に振り返る。

「御主人様」
「どうかしたかね、御者」
「門前にて、何方かが立っております。衣装は遠目から見ても厳かなものでして、しかも門を守る衛兵の姿がありません」
「・・・その人、というのは、御老輩かな?」
「は?・・・まぁ、確かにそう言われればそうとも見えますが」
「なら話は早い。御者、その人に用がある。門前で一度馬車を止めてくれ」
「畏まりました」

 思い当たる節があって男はにたりと笑みを浮かべた。そして残り僅かな葡萄を一気に口に頬張りその口端に果汁の滴を浮かせ、天幕から顔を出して後ろを振り返る。後ろに続く馬車は馬は四頭、その上その荷台には大きな駕籠が純白の布に覆われた状態で置かれている。まるで何かをひた隠しにしたいという意図が感じられて、その白布には黒い影が透けている。そして、身体の彼方此方から太い指のようなものを揺らしていた。まるで蠢く触手のようであり、布を被さった状態であっても否応無く邪悪な香りを漂わせてしまう。

「・・・お前でも慄くかね?」

 男はそっと御者に問いかけた。御者は引き攣った表情を正して再び前を行く。その背中の震えを直そうと懸命に馬鞭を叩く様に男は思わず、「きひひっ」という意地の悪い笑みを浮かべた。
 馬車が巨体を誇る門の前へと到達し、鳩顔の男は馬から降りた。そしてその黄土色の瞳に一人の冷酷そうな老人を捉えて頭を垂れる。

「矢張り貴方でしたか、レイモンド執政長官。御無沙汰しております」
「定刻通りだったな。相も変わらず人相が悪いな。人間の皮でも被ればよかろ
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