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王道を走れば:幻想にて
第三章、終幕:騎士騎士叙任式
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家具、整理が行き届いた本棚、そしてゴブレットや銀皿を置いたチェストに囲まれながらコーデリアは無邪気に喜び賞賛の声を上げる。王女として備えておくべき風格や品位を、今この時においてすっかりと忘れてしまっているようだ。代わりに出てきているのは少女としての可憐さである。それが唯一途に、慧卓に向かっていた。  
 対照的に慧卓は正にくたくたと様子で、何の躊躇いも無く王女の寝台に腰掛けた。目は半ば虚ろで、鎧を脱いだ後の白のチュニックは何時も以上に多くの皺が走っているようであった。コーデリアは彼に向かってはにかみながら尋ねた。

「これで晴れて王国の騎士だね・・・どう、実感湧く?」
「・・・ちっともだよ」
「あれ?さっきはあんな格好良い事言っていたのに」
「・・・あれな、異界じゃ古くから読まれている本の言葉を必死に思い出して、俺なりに改変して作った台詞なんだ。言っている事は全部本音なんだけどさ・・・昨晩、寝ずに考えたから・・・もう、駄目」

 そう言ってばったりと彼は寝台に倒れこんだ。うつ伏せになって外界の光を拒絶している格好であり、余程心身が疲れてしまったのであろう。だが彼にはまだ起きて貰わねばならないのだ。

「ほら、起きないと駄目だよ。これから新任騎士の闘技会があるんだから」
「・・・・・・聞いてない」
「予め聞いてこなかったのが間違いね。ケイタクは昨日の事があるから、ブルーム郷が参加者枠から外して下さったそうよ。後で礼を言っておきなさい」
「・・・ありがとー、ブルーム郷・・・」
「此処で言わないのっ!」

 軽く挙げられた慧卓の手。コーデリアは諌めるように優しく彼の手を握り、親しげに語る。

「それに、まだまだ沢山予定はあるわよ。大道芸人の一座の見世物もあるし、吟遊詩人の歌会。あっ、あとは夜に騎士叙任の祝賀会があるか。ね、私も一緒に出るから、ケイタクも頑張ってさ・・・」
「・・・もう、寝る・・・」
「ちょ、ちょっと、ケイタクっ!寝ちゃ駄目だってば!バレちゃったらまずいよ!此処私の部屋だから、寝るんだったら自分の部屋に行ってーーー」
「失礼します、コーデリア様。何やら騒がしき音を耳にしーーー」

 入り口の扉がさっと開いてしまう。外から入ってきたアリッサは寝台で寝入りの体勢になっている慧卓と、その肩を揺さぶろうと彼に覆い被さっているコーデリアの姿を見て硬直した。眉が俄かに垂れて、放心したように口が開かれる。彼女の後ろからトニアが赤髪を揺らしながら顔を覗かせて、にやにやと口を歪めた。

「・・・あらあら。熊美殿に倣ってか、ケイタク様も随分と手の早い人ですな。麗しの御令嬢の寝台に己の香りを移すだなんて、いやらしい」
「そういう問題では無かろう!!」
「おや?もしや姉上は先に手を出されたコーデリア様に嫉妬の念を抱いてい
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