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王道を走れば:幻想にて
第三章、終幕:騎士騎士叙任式
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女殿下の護衛の任を見事に全うし、騎士の栄誉を示したものなり。これを受け、汝に、黒衛勲章を授与致す。謹んで享け賜るべし』
『はっ!更なる精進を重ね、王国の繁栄に我が忠誠と命を捧げる事を、御誓い致します!』

 アリッサが俄かに背を戻す。その姿勢を保っていると近衛騎士等が彼女に近付き、純白のマント、その頸下の留め具を素早く外す。近衛騎士の一方がマントが外れぬようその襟元を持ち上げ、トニアが彼女と目線を合わせるよう跪いて、代わりの留め具を掛けていく。それは、フィブラと呼称される留め具に類するものであった。複雑な金細工の衣装は正に職人芸の賜物であり、貴族等の美への洞察を唸らせるほどの出来栄えである。取り訳、その勲章を意味した黒きダイヤモンドは底の深い妖艶な雰囲気を醸し出していた。
 コーデリアとトニアが喜ばしげに笑みを浮かべ、アリッサも彼女等にのみ分かるよう笑みを浮かべた。近衛騎士等が離れるとアリッサは常の凛然とした表情を浮かべて国王等を見返し、さっと立ち上がって最敬礼をする。そして新たなる留め具の輝きを見せつけるよう悠々と歩き、元の場所へと戻った。

『元黒衛騎士団団長、クマミ=ヤガシラ』
「はっ」

 最後の者が、しごく落ち着いた様子で向かっていく。丸太を髣髴とさせる太い腕を脚。野獣にも等しき大きな巨体とそれを覆う鋼鉄の鎧。そして厳粛に構えられた壮齢な厳しき顔。其処に佇む多くの者達が心の底から込み上げているかのような畏敬と視線を向ける。穴が空きそうかと錯覚してしまうほどの集中砲火に関わらず、其の者、熊美は冷静さを一分たりとも失わずに堂々と歩いていく。そして、前の二人と同様に跪く。無駄の無く、それでいて気品のある動作であった。

『汝は鉄斧山賊団団長、カルタス=ジ=アックスとの一騎討ちにおいて、絢爛たる武技を見せ、これに勝利した。また、昨日の教会宝物庫における火災においては迅速なる鎮火活動を見せ、王国に罹る災禍を振り払った。これらは賞賛に値すべき、輝かしき活躍である』
『これもまた、王国臣民の無垢な信心のお陰に御座います』
『・・・我等はこの活躍に際し、一度、汝を再び騎士として叙任すべきと考えた。而して汝は今や国の英雄。誉れ高き豪刃の羆。我等下々の者達にその栄誉を与う資格は無い。よって此度において特別に、国王陛下の御言葉がある。静粛に拝聴すべし』

 広間に漂っていた雰囲気が一変する。より静粛に、より毅然としたものに。レイモンドが一礼をしたのを期に、ニムル国王はその抑揚が抑えられた枯れ声を広間に解き放つ。

『クマミ=ヤガシラ』
『はっ!!』
『此度におけるそなたの一連の活躍、余の目においても誠見事なものに映った。流石は王国の誉ある英傑である。臣民の忠誠と勇気、その手本とすべき精神を汝は示したのだ。よって余は此処に、そなたの帰
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