第六章
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二球目はスライダーだ、恒夫はバットを出そうとしたが途中で動きを止めて見送った。そうしてカウントは進んだ。
その左右の揺さぶりからだ、秀巳は。
三球目を投げた、ストレートだった。それはストライクだった。
「ツーストか」
「あと一球だな」
「今日は兄貴ずっと三振ばっかりだしな」
「これは駄目かもな」
「ああ、弟には負けるか」
「そうなるか?」
ファン達はこう話した、今回はというのだ。その彼に対して秀巳の調子はというと。
「さっき一五〇出てたな」
「九回でまだそれだけ出るからな」
「シュートもスライダーもキレがよくてな」
「コントロールも確かだよ」
調子は全く落ちていなかった。
「これだとな」
「大丈夫か」
「ああ、このままな」
「弟の勝ちか」
「そうなるな」
こう話すのだった、今回の勝負は最後も秀巳の勝ちに終わるかというのだ。そして四球目にだった。
秀巳はフォークを投げた、彼がプロに入って新しく覚えた球種だ。そのフォークを恒夫に投げた。これが決め球になる筈だった。
ストライクのボールをだ、恒夫は。
一閃した、下から上に。そうして思いきり振り上げ。
白球を一直線にだった、スタンドまで放り込んだ。球場は一瞬静まり返り。
次の瞬間だった、球場は歓声に包まれた。まさかの一撃だった。
逆転サヨナラスリーランだった、打った恒夫はバッターボックスで小躍りし打たれた秀巳は呆然とボールが飛んだ方を見て固まっていた。
勝負ありだった、秀巳は崩れなかったが。
それでもだ、首を横に振って兄に言った。
「負けたよ、今回は」
「打たせてもらったぜ」
「まさかこうなるなんてな」
「今回は俺の勝ちだな」
「ああ、兄貴の勝ちだよ」
その通りだとだ、兄に答える。
「けれど次はな」
「御前が勝つっていうんだな」
「今度こそはな」
こう言うのだった、だが今は打たれたことを認めるのだった。
恒夫は大歓声の中ダイアモンドを回りナインに囲まれた、そして秀巳は。
ベンチに歩いて戻った、そしてそこで監督に言われた。
「次だ」
「はい」
これだけだった、ナインもあえて言わなかった。
そうしてだ、シリーズは進み。
六戦目でだった、恒夫のチームが先に四勝、八条グループのプロ野球のシリーズも先に四勝した方が優勝となるがそれを決めたのだ。
恒夫ははじめての日本一を楽しんだ、秀巳はグラウンドで自分のチームの監督を胴上げしている彼をベンチから見て言った。
「悔しいですね」
「そう思うか」
「はい、ですから」
それでとだ、監督に言うのだった。
「二度と負けたくないです」
「そうだな、ではな」
「兄貴には負けないです」
これが今の彼の言葉だった。
「他の奴にも」
「そう思
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