第3話――天は地よりやってくる
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もう一人は竈に入ってる鉄の棒を押しつける準備をする。
「……カマ……ル」
「ん?何か言ってるぞ」
「どうせ助けてくれーとかそんな感じだろ」
おちょくりながらも鉄の棒を準備するのを止めない。
とうとう準備が終わり、コハクへと押しつけようとしたその時。
「《灼爛孅鬼》(カマエル)」
重々しくはっきりと天使の名が告げられた。
ボゥッと炎がコハクの体から溢れだし、まるでコハクを守るかのように纏わりついた。
「な、なんだ!?」
「お、おい!?」
いきなりのことに大人二人は驚き慌てた声をあげる。
「おい!どうした!?」
牢の外から見張りをしていた大人二人も中にいる拷問をしていた二人の慌てた声を聞き、特別懲罰房の中を覗き、炎に包まれているコハクを見つけ驚きの声をあげる。
「やりすぎだ!みせしめにするのに炎をつけて燃やしてどうする!」
「ち、違う!こ、こいつが!いきなり燃えたんだ!」
「お、オレ達はなんもしてねぇ!」
「んなわけあるか!
とりあえず火消せ!
お前水もってこい!」
「おう!!」
牢の外にいる内の一人が慌てて走っていった。
「僕は、ただ笑っていたいだけなんだ。
みんなと一緒に。
だから、それをじゃまするなら――――こわすよ」
聞こえてきたのはまだ声変わりもしていない子供の声。
けれどその場にいる3人の大人たちはその声に恐怖した。
何故なら、炎の中から聞こえるのだから。
本来なら既に生きているのを諦めるほど荒々しく猛る炎。
その中から声が聞こえるという異常さに。
その声に3人の大人達の本能が脳内に警鐘を鳴らした。
危険だと。
ボゥッと再び炎が荒れ狂い、一瞬にして消えた。
そして姿を現したのは鞭で打たれた傷や顔の傷しかなく、鎖は熔けて外れ自らの足で立つコハクだった。
「《灼爛孅鬼》(カマエル)はこわいね」
無性にモノを壊したくなる、と小さく呟く。
そして、まぁ、それが天使の力を使う代償なのだから仕方がないか、と心の中で嘆息し、巨大な戦斧を肩に担ぐ。
大人でも持てそうにないほどの巨大な戦斧を軽々と担ぐ姿は、異様すぎて大人達を圧倒した。
「だから、ごめんね。
ここでこわれて。
僕たちのためにも」
戦斧を一振りする。
すると戦斧から炎がうねり大人達を襲った。
一瞬にして燃え広がる炎は大人達に悲鳴をあげさせないまま灰塵と化した。
牢の外にいる大人すらも。
「ごめんね。
うらみはなかったんだ」
言い訳でもするかのようにポツリと呟いた。
そのコハクの顔は悲しみと自責に彩られていた。
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