二十三話:決別の選択
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輝く金色の髪は、精霊の主とは違いシルフに結ってもらっていない為に
ガイアス風に言うとヒュンとなっていない。
まるでルビーの様に赤く輝く瞳は俺を見据えて少しだけ憂いを湛えている。
姿形はミラ=マクスウェルと全くと言っていいほど同じではあるが、
ミラ=マクスウェルとは違い女性らしさを感じさせる。
あちらはあちらで精霊の主としての凛とした威厳を漂わせているのだが……まあ、燃費が悪いためにその威厳が長く続くことは無い。
とにかく、今、俺の目の前にいるのは俺とエルにとっての“ミラ”だ。
他の誰でもない、ずっと、俺が求めていた“ミラ”だ。
「久しぶりね、ルドガー。……あなたの選択は見ていたわ」
「ああ、久しぶりだな、ミラ」
お互いに言葉を交わすが少しだけ気まずさが残る。何だろうか、こんなにも会いたいと思っていたのにいざ会ってみると言葉が出てこないな……。ああ、そうだ。こういう時にエルが居ればこんな雰囲気を破って、また、あの頃みたいな楽しい雰囲気にしてくれるんだろうな。
だからこそ俺は、全てを捨ててでもあの頃に戻るんだ!
ゆっくりとミラに近づいていき、かつて彼女を手放してしまった左手を伸ばす。
「ミラ、“みんな”と一緒に生きよう、またあの頃に戻ろう。
―――今度はエルともずっと一緒に居られる」
そうだ、今度こそ一緒にいるんだ。
また、俺と君でどっちのスープが美味しいか勝負しよう。
それでエルが食べきれないほど二人で作って一緒にエルに怒られるのも面白いかもしれない。
でも、エルは何だかんだ言いながら美味しいって食べてくれるんだろうな。
エルは優しいから。それで素直じゃない君は嬉しいのを隠して
『わ、私が作ったんだから当然よ』なんて言うんだろうな。
それを俺が横から見て笑って君から怒鳴られたり、小突かれたりするかもしれない。
そんな…そんな…幸せな生活をまた取り戻すんだ。
“生きる意味”があったあの頃にまた戻るんだ!
「だから……ふざけるんじゃないわよ!」
俺の伸ばした腕を“再び”払いのけるミラ。
ミラ……どうして、俺の腕を払いのけるんだ。
この手を握ってくれれば今度は絶対に離さないのに…どうして。
君はそんなにも怒っているんだ。君はそんなにも悲しそうな顔をしているんだ。
どうして―――泣いているんだ?
「あなた、自分が何をしているか、何をしようとしているのか分かっているの?」
「俺は、ただ“みんな”と一緒に居ようと―――」
「逃げているのよ……ルドガー。あなたは現実から逃げているだけ。自分の罪から逃げているだけ、生きることから逃げているだけ!」
逃げている? 俺が現実から、自分の罪から、生きることから、逃げている
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