二十三話:決別の選択
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のに自分は蘇れない。
そのことに彼女は自分の世界の『神』とも呼べる存在に若干の苛立ちを覚えたがすぐにそれを思い直す。彼は産まれた瞬間から一族の犠牲となることが決定づけられていた。
他のクルスニク一族の人間も同じだろう。彼等は先祖が結んだ理不尽な契約に最初から最後まで縛られていたのだ。無関係なのに審判を越えられるのは自分達しかいない為に審判に挑むしかなかった哀れな一族。いくら骨肉の争いを繰り広げていたとは言っても誰が審判の一番の被害者かと言われれば彼等しかいないだろう。
審判などなければそんなことは起きなかったのだから。
だからこそ『神』とも呼べる存在オリジンはクルスニク一族である彼にほんの少しの贖罪として新たな人生をプレゼントしたのだろう。
そこまで考えて彼女はため息をつく。
もう、時間が無いのだ。だんだんと体が薄くなっていっている。自分はここで消える。
そう思った彼女は最後の最後に彼に届かない――届いてはならない言葉を投げかける。
「愛しているわ……ルドガー。だから―――幸せになって」
世界と彼女は壊れた。
目が覚めると見慣れた自室の天井が目に入った。さっきまでの出来事は夢だったんだろうな……。だからと言ってミラから言われたことが……俺の気持ちが揺らぐことは無い。
俺はもう大丈夫だ。君のおかげで今を生きていく勇気が持てた。
もし君に恩返しが出来るならそれは俺が幸せになることだと思うから俺は、“今”掴める最高の幸せを掴んで見せる。審判になんて関わらなくても俺は幸せになれる。
俺はもう迷わない、俺は―――覚悟を決めた。だから……もう、心配しないでくれ。
でも……やっぱり、もう会えないのは寂しいな。
「ルドガー……起きてる?」
控えめなノックと共に黒歌の声が聞こえてくる。
時計を見てみると時計は既に夜の八時を過ぎていた。どうやら結構長い間寝ていたみたいだな。
いつもならもう、夕食を食べている時間だ。急いで黒歌の分を用意しないとな。
そう思ってベッドから起き上がろうとしてよろけてしまう。
寝る前までは気がつかなかったけど俺は身も心もボロボロだったんだろうな。
まあ、寝てないし、食べてなかったから当然だな。
それにしても『あなたはあなたの“生きる意味”を見つけなさい』か……。
簡単に言ってくれるよな……君や兄さんやエルと同じぐらい俺を思ってくれる人が…支えてくれる人が…俺が愛せる人が…そう簡単に見つかるわけがないじゃないか……。
「ちょっと待ってくれ。すぐに夕飯の準備をするから」
「あ、大丈夫にゃ。その……今日は私が作ったから」
「黒歌が……そうか、ありがとうな」
部屋から出て直ぐに夕飯の準備
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