二十三話:決別の選択
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そんなところに……フッと彼女の言葉が聞こえてくる。
「あなたはあなたの“生きる意味”を見つけなさい……ルドガー」
ああ……君は本当に―――優しい。
「………もう、いないわよね」
崩れゆく空間の中で元の精霊の主―――ミラはポツリと呟く。
この空間が消えれば自分も消える。今度こそもう二度と彼と会うことは出来ない。
そのことを彼女は十二分に理解している。
しかし、理解していることと納得することは違う。
彼女の心には今にも溢れ出さんとする感情が渦まいている。
彼が前に進むために言うことが出来なかった。自分の本当の気持ち。
彼が完全に居なくなったことを確認すると彼女はその感情を吐き出した。
「私だって……本当は、ずっと一緒に居たいわよっ!」
吐き出された、痛々しいばかりの純粋な一緒に居たいという感情。
涙ばかりに彼女は悲痛な叫びを上げた。
彼が全てを捨ててでも自分を取り戻してくれると言ってくれた時、本当は嬉しかったと彼女は心の中で零す。自分の為に全てを捨ててくれると言うのだ。しかも、それを自分が想いを寄せている相手から言われたのだから嬉しさはひとしおだっただろう。
しかし、彼女はそんな彼の言葉を拒絶し、別の道を選ばせた。何故なのか?
その理由は簡単だ。彼女が本当の意味で彼が好きだったからだ。
彼女は知っていた、彼が選ぼうとした選択がどれだけ残酷で辛いものかを。
彼女は理解していた、彼の苦しみを。彼女は優先した、彼、自身の幸せを。
まがい物の過去ではなく、本物の今を彼女は彼に選んでほしかった。
だからこそ、自分の気持ちを押し殺して迷っている彼を叱責した。
「初恋は実らないって言うけど……本当にそうね」
彼女は彼に恋をしていた。お互いに想い合っていたのにも関わらず彼等の恋は実ることは無かった。それが世界の定めなのか、彼が犯した罪のせいなのかは分からない。ただ一つ言えることは生者と死者の間には決して越えることのできない壁があるということだ。
だからこそ、彼女は自分の心を押し殺して彼の告白を断った。
彼が前を向いて歩いていくには死者である自分は不要だと悟っていたからだ。
だから、彼が自分の事を忘れて歩いていけるように嘘をついた。
今なお好きだという気持ちはあるがそれを抑え込み彼の背中を押した。
そして同時に彼女自信、死者は二度と帰ってこないからこそ大切な者を全てに代えて守る必要があると身をもって知っていたからだ。
かつて一人の少女を守る為に彼女が彼の手を離した時のように……。
「死人は生き返らないのに……普通に生き返っているのはちょっとずるいわね」
彼は一度死にそして再び蘇った。それな
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