二十三話:決別の選択
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地面に這いつくばりながらそんなことを考える。そんな俺の様子を見下ろしてくるミラ。
腰に手を当てて見下ろしてくる様子は何故か彼女によく似合っていた。
ああ……本当に懐かしくて楽しい時間だな。いつまでも…いつまでも…続いて欲しい。
………でも、俺は先に進まないといけない。彼女とそう約束したんだから。
俺の幸せの為に……そして“みんな”の幸せの為に、俺は進まなくちゃいけない。
だから……楽しい時間はここまでだ。もうどんなに辛いことがあっても俺は振り返らない。
俺は―――今を生きるんだ。
世界に罅が入っていく音が聞こえてくる。
もう……ここに居られる時間は少ないんだろうな。
それなら、せめてこの気持ちにケリをつけよう。ずっと胸に抱えて来たこの気持ちに。
君の世界を壊した罪悪感から言いたくても言えなかったことを。
「ミラ……好きだよ」
ずっと温めて来た気持ちをミラにぶつける。
それを聞いたミラは一瞬顔を赤くしたがすぐにそれは無くなり、悲しげな表情に変わる。
答えは聞く前から……分かっている。君は本当に―――優しい。
「私は……あなたの“生きる意味”にはなれないわよ」
「振られたな。人生二度目の経験だ」
そう言って軽口をたたく。振られたショックはとくに湧き上がってこないけど……君にそんな表情をさせてしまったことが辛くてしょうがない。
分かっている…分かっていたんだ…っ!
君がもうどこにもいないことも…もう俺達が一緒に笑っていられる日が訪れることが無いことも…ここが現実ではなく、どこまでも幸せな夢の中だということも…。
全部……分かっていたさ……でも、いや、だからこそ、俺は踏み出さないといけないんだ。
「そろそろ、お別れみたいね……また、ここに来たらぶん殴ってあげるわ」
「分かっている。もう来ないように頑張るさ………ありがとう、ミラ」
「……あなたを支えてくれる人を大切にしなさい」
ニッコリと笑って中々に物騒なことを言うミラ。
俺はそんなミラの表情を目に焼き付けて最後に『ありがとう』と、それだけを言い残して背中を向ける。そして、鉛のように重い足を動かして先に進み始める。
その背中に『支えてくれる人を大切にしなさい』と声がかかる。
……俺なんかを支えてくれる人が居たら、そうするよ。
そう口にしたいが振り返ることはしない。それは彼女に対する最大の侮辱だと思うから。
俺が“今”を生きることを選択することが出来た恩人である“過去”への最大の敬意だと思うから。俺はもう絶対に振り返らない。
それでも…それでも―――君に手を伸ばしたくなってしまう。抱きしめたくなってしまう。
こんな事を思うのは……いけないことなのだろうか? 心の中で自分に問いかける
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