二十三話:決別の選択
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して俺は彼女の手を掴んでやれなかったんだろう……。
そう思うと抱きしめる手に力がこもる。
「どうして…どうして…あなたが…っ。全てに絶望していた私に生きろと言ってくれたあなたが
どうして生きる意味がないなんて思うのよ! どうして過去にすがっているのよ!
今を生きなさいよ!」
「ごめん……ミラ」
「自分の世界が無くなって、一人ぼっちで…居場所も、何の希望もなかった私に
希望を与えてくれたあなたがどうして、一人で悩んでいるのよ! もっと周りを見なさいよ!」
ごめん…そう何度も言い続ける。その間にもミラは俺に与えられたものを言っていく。
涙を流しながら……。本当にごめん、ミラ。
俺が迷っているから、俺が逃げているから、君はこんなにも傷ついていたんだな。
俺が苦しんでいることに……こんなにも苦しんでくれていたんだな。
君がこんな気持ちになるならエルや兄さんはもっと苦しいだろうな。
自分達のせいで俺が苦しんでいると思ったら優しいエルや兄さんはきっと傷つく。
俺はエル達に笑っていて欲しい。この気持ちは変わらない。
やっぱり俺は誰かの為に生きることしかできないのかもしれない。
でも…やっと分かったんだ。
みんなが幸せになるには、まずは俺が―――幸せにならないといけないんだ。
“みんな”は優しいから、俺が幸せにならないと“みんな”は幸せになれないんだ。
「なあ……ミラ。俺、生きていていいのかな? 幸せになっていいのかな?
もし、いいなら俺、頑張って生きるよ。今度こそちゃんと過去でも、未来でもない今をさ」
「むしろ、そうしないと殴るわよ……と言うか、いい加減、離れなさい!」
突如、抱きしめていたミラから突き飛ばされる。ああ……何だか懐かしいな。
それに顔を真っ赤にした君が可愛くて怒るに気にもなれないから変な気分だ。
ははは……何だか久しぶりに気分が良くて笑いが出てくるな。
そんな俺の表情が気に入らないのか君は拗ねてそっぽを向いてしまう。
その様子がどうしようもなくおかしい。
悩んでいた物が無くなったおかげで胸が軽くなって全ての景色が美しく見える。
………ここには何もないとか言うツッコミはなしだぞ。
まあ、ミラが綺麗だって言うので納得してくれ。
「そう言えば、俺の“生きる意味”はどうなるんだ?」
「私は知らないわよ、自分で見つければ?」
「そこは、ミラがなってくれるとは言わないんだな」
「な、なに言っているのよ!」
再び顔を赤くして、慌てふためきながらに俺に殴りかかってくるミラ。
俺はそれをヒョイと避けてドヤ顔する。しかし、すぐさま放たれた二撃目の前にあえなく撃沈する。一撃だけだと油断していたな……。
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