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エクシリアmore −過ちを犯したからこそ足掻くRPG−
第四十六話 決戦前のコンマゼロ(後)
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 ハ・ミルにいた時は、いつも一緒にはいてくれなかったけど。思い出したから。
 お父さんとお母さんのために、あの日泣いてくれたジャオさん。
 小さなわたしといっぱい遊んでくれたジャオさん。
 優しくないわけがない。

「エリーゼは親御どのによう似て、善い子だのう」

 うれしそうで、かなしそうな、笑顔。なんだか、見てるわたしのほうがさびしくなっちゃう。




「エリーゼ。やはりあの連中と行くのか?」

 シャン・ドゥに帰り着いてから、ジャオさんがわたしに聞いてきた。

「はい。行きます」

 自分で意識したわけじゃないけど、するっと言葉が出た。
 なんだ。わたし、もうとっくに心の中でどうするか決めてたんだ。

『ヴィクトルもフェイもアルヴィンもイバルも、みーんな大事な友達だもん』
「そうか……」

 ジャオさんはしゃがんで、おっきい両手でわたしの両肩を包んだ。

「ワシは四象刃(フォーヴ)として陛下のおそばを離れられん。だからお前たちに全てを託すしかできん。力になれず、すまぬ。こんなことを言ってはならぬのだろうが――どうか、お前だけは無事に帰って来てくれ、エリーゼ。世界の運命がどうなろうと。ワシが望むのはそれだけだ」

 ジャオさん……世界よりも、わたしを、選んでくれるんですね。

『帰ってくるよ。ヴィクトルたちとみーんないっしょに』「待っててくださいね」

 ジャオさんは今度、優しく笑ってくれた。胸がぽかぽかした。






/Ivar

 久しぶりにここへ来た。ここ――ミラ様の、マクスウェルの祠の前に。

 この祠から「俺」は始まった。俺の原点、母胎といってもいい場所。「巫子イバル」としてのほとんどの思い出がここでの出来事だ。いいも悪いも、喜びも怒りも。

 ミラ様。貴女がリーゼ・マクシアを守ろうとなさっているのは、このイバル、痛いほど理解しました。
 ですが貴女と姉上様のやり方では、今度こそエレンピオスを切り捨ててしまう。

 たかだか巫子でしかない俺に、主人であるミラ様の在り様を断じる権利などありはすまい。
 それでも、ここでお諫めできなくば、ミラ様から最後の誇りをも失わせてしまう。
 俺はそんなこと許せない。許せないのです。


 ――ならばマクスウェルの巫子イバルよ。そのためにミラ様に剣を向けられるか?


「ああ」

 二刀を抜いて、構え。そして、空を斬った。
 散っていた枯葉が、全て2枚に裂けて地に落ちた。

「俺はミラ様の巫子だ」

 ミラ様。このイバル、ミラ様のために、今より貴女様の敵となります。
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