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エクシリアmore −過ちを犯したからこそ足掻くRPG−
第四十五話 決戦前のコンマゼロ(前)
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/Victor
世精ノ途から戻って4日。ジルニトラ号沈没の日から変わらず、私たちはニ・アケリアに仮住まいをしていた。
そして、4日目の夜。フェイが私をキジル海瀑に呼び出した。
一緒に行けばいいものを、わざわざ待ち合わせて行くようにしたのは、イル・ファンでそうできなかったからだろうと、こちらにも想像がついた。
夜のキジル海瀑に来るのは初めてだ。滝の音、黒い水面。何度も通って見慣れたと思ったのに、今は全く異なる印象を受ける。
黒い水面の上に立つフェイも、陽の下で見るのとは異なる顔に映る。
何が楽しいのか、水面を地面にくるくるとデタラメなステップを踏むフェイ。その動きに合わせて、蛍が踊る。これはこれで一風変わったステージだ。
フェイは夜の海面のダンスを堪能したのか、私がいるほうの岸へ戻って来た。
「来てくれたね」
「当然だろう」
「うん。本当はちょっと、来ないかもって思ってた。来てくれてうれしい」
そうだな。少し前の私たちの関係では、こんなシーンはありえなかった。
「明日、みんな来るかな?」
「来るだろう。あれでいて腹の据わった連中ばかりだから」
前回は連れて来なかったクレインとローエンにも打診してある。これだけいれば、ミラとミュゼ相手でも後れは取るまい。
「明日で最後、なのよね。わたしもパパも、この世界にいられるの」
「――そうなる」
断界殻
(
シェル
)
が開けば、私とフェイは消滅する。
私はいい。とうに腹は括ってある。だが、フェイはどう思っているのか。今日まで聞かなかった。
手近な岩に腰かける。首を傾げるフェイに、なるべく穏やかに聞こえるように。
「おいで」
フェイは息を呑み、次いで泣きそうな顔で笑って、座る私の膝に頭を預けた。
流れ落ちる瀑布の轟音だけしか、しばらく聞こえなかった。
「あのね、パパ」
「何だ?」
「ユティちゃんからイロイロ聞いたの。分史世界に避難した時」
ユースティア……分史世界の兄さんの娘。私の姪で、フェイにとっては従姉妹。
「あの子の世界は先がなかった。そんな中で、大人になったお姉ちゃんは戦ってたって。ユティちゃん、お姉ちゃんに憧れてたって。お姉ちゃん、『
勝利の女神
(
ヴィクトリア
)
』って名乗ってたの。どの世界のお姉ちゃんでも、お姉ちゃんはパパが大好きなんだね」
! エル、が……そうか。あの子の世界のエルは、私の名を冠してくれたのか。
嬉しいよ、エル。お前が「エル」だからじゃない。一人の父親として、娘に愛されることが涙を流しそうなほど嬉しい。
私はこの瞬間、エルを初めて娘として見たのかもしれない。私の中でエルは「エル」で、俺の運命の人で、娘ではなか
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