第六章
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「頭おかしいとしか思えないし」
「少なくとも目では笑わないぜ」
「まああんたはそうしないわよね」
「だから一回やってみろよ」
「ナチュラルメイクね」
「そうしてみろよ、目のところな」
「じゃあ一回勇気を出してね」
愛乃にとってはまさにそうした行為だ、だからこう言うのだ。
「明日からやってみるわね」
「そうしろよ、禿げの人がカツラ脱ぐみたいにな」
「私禿げてないからね」
「だから例えだよ」
今の言葉は、というのだ。
「ついでに言うと俺も禿げてないからな」
「最近抜け毛は?」
「大丈夫だからな」
半分自分に言った言葉だ。
「そのことは」
「本当に?」
「そう思っていてくれ」
これは九割愛乃に言った言葉だ、ただ一割は自分にだ。
「頼むからな」
「その辺り男は大変ね」
「女もなるから注意しろよ」
「えっ、私もなの」
両手で自分の頭、髪の毛を抑えて言う愛乃だった。
「来るの」
「ああ、油断したらな」
その時はというのだ。
「最近女の子でも薄毛とかあるだろ」
「そういえば噂でね」
愛乃もここで思い出した。
「中年の女の人で結構」
「抜け毛とかあるだろ」
「その辺り女の子もなのね」
「だから気をつけろよ、御前も」
「そうね、他人事じゃないからね」
「間違っても薄毛の人は笑うなよ」
夏樹の言葉はこれまで以上に真剣だった。
「因果応報だからな」
「自分もなるからね」
「そうなったら泣くからな」
「怖いわね」
「だから気をつけろよ」
「ええ、よくわかったわ」
愛乃も真剣な顔で頷く、そしてだった。
愛乃は夏樹のアドバイス通りにアイメイクをこれまでよりも遥かに薄くさせて自分の垂れ目をそのままにさせた、すると。
誰も悪く言わない、その目のことを。
それどころかだ、ある同期の女の子が愛乃を見て言うのだった。
「いいじゃない」
「いいって?」
「だから、あんた今アイメイク薄いわよね」
このことを指摘してきた。
「それいいわよ」
「そうなの」
「というか可愛いわよ」
「可愛いの?」
「かなりね。愛乃元々小さいし」
その小柄さも言うのだった。
「アイメイク薄い方がいいんじゃない?」
「そうなのね」
「むしろこれまで無理してる感じだったわよ」
今だから言えることだった。
「意識してね」
「垂れ目を」
「というか全然気にならないどころかね」
それどころか、というのだ。
「かえっていいと思うわよ」
「目はそのままの方が」
「私はそう思うわよ」
「ううん、そうなの」
「私から見ればね」
こう愛乃に言うのだった、その娘にそう言われた他にもだった。
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