第四章
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「もういいわよ」
「巨人にいろっていうのか」
「ええ、どうなってもいいから」
「日本ハムには戻って来るな、か」
「北朝鮮にでも行ったら?」
自称地上の楽園にだ、ただその地上の楽園に行って生きて帰った者は一人もいない。帰国事業ももうない。
「多分楽しいわよ」
「普通に餓死するだろ」
「そうかもね」
やはり素っ気無く言う愛乃だった。
「まあどうでもいいけれど」
「本当にきついな」
「そうもなるわよ」
こんなことを話しながらだった、愛乃は夏樹と共に試合を観戦した、愛乃は醒めているが夏樹は熱狂的で。
サヨナラ勝ちした時はだ、席から立ち上がり両手でガッツポーズをして叫んだ。
「よし、優勝だ!」
「だからまだペナントは続くわよ」
「ずっと首位を守るんだよ」
しかしまだ言う夏樹だった。
「阪神がな」
「まあシリーズで待ってるからね」
「何だよ、クールだな」
「だから私はパリーグファンなのよ」
「それでかよ」
クールだというのだ。
「まあ御前らしいけれどな」
「興味がないものにはね」
「とことんクールなんだな」
「そうよ、まあ勝ったし」
それならとも言う愛乃だった。
「お祝いに飲みに行く?」
「近くに焼肉屋あるから行くか?」
夏樹が勧めるのはこの店だった。
「安くて美味いからな」
「焼肉とビールね」
「ホルモンもいけるぜ」
「いいわね、じゃあ二人でね」
「阪神の優勝を祝おうな」
「その元気さがクライマックス終了まで続いていることはお願いしておくわ」
愛乃はこう言って自分も立ち上がった、そしてだった。
二人でその焼肉屋に入りだ、肉をどんどん焼きビールを大ジョッキで飲んだ。そのビールを飲みつつだ、愛乃は自分の向かい側にいる夏樹に言った。
「あんたとは同期で付き合いも長いけれど」
「いきなりどうしたんだよ」
「だから言うけれどね」
この前置きからの言葉だった。
「私ね、今アイメイクしてね」
「ああ、御前そう言えばな」
「目がね」
苦い顔になった、それはビールの苦さによるものではない。
「ちょっとね」
「垂れ目だっていうんだな」
「それがね」
「垂れ目なあ」
「あんた私の目は知ってるでしょ」
「まあな」
このことは否定しない夏樹だった。
「入社式の時見たからな」
「その目がね」
「コンプレックスだっていうんだな」
「私の目って小さくて垂れ目で」
「不細工か」
「もっとしっかりしたぱっちりとした目ならいいのに」
愛乃は唇を噛んで言った。
「本当にね」
「いや、俺はな」
しかしだ、ここでだった。
夏樹は焼肉を箸で口の中に入れて食いながらだ、愛乃に返した。
「別にいいと思うぜ」
「垂れ目でも?」
「全然いいだろ」
こ
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