第二章
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「そうしないか?」
「私パリーグなのよ」
ところが、と返す愛乃だった。
「日本ハムね」
「ああ、そうだったのか」
「だからね、阪神と横浜って言ってもね」
「興味ないか」
「そもそも何で私を誘ったのよ」
「今日男のツレと一緒に行く予定だったんだよ」
当初はそうだったというのだ。
「そのつもりだったんだよ」
「それが、っていうのね」
「さっき携帯で風邪ひいたって連絡があってな」
「駄目になったのね」
「それでなんだよ」
それでだというのだ。
「どうかって思ってな」
「私に誘いかけたのね」
「けれど日本ハムファンか」
あらためてだ、こう言った夏樹だった。その一重の目を困った感じにさせている。やや浅黒い細面にある太くいささか鈎形になっている眉もだ。髪は少し脱色して耳を隠す位の長さにしている。
その彼だが、こう言うのだ。
「ならな」
「ちょっと待って、券はあるのよね」
「だから誘ってるんだよ」
「そうよね、若し私が行かないと」
「御前が最後なんだよ」
最後に声をかけた相手だというのだ。
「だから御前が断ったらな」
「もう券が余るのね」
「そうなんだよ」
夏樹も愛乃に残念そうに話す。
「これがな」
「それじゃあね」
それならとだ、愛乃はその夏樹に話した。
「いいわ」
「来てくれるのかよ」
「ええ、いいわよ」
こう彼に言うのだった。
「一緒に行きましょう」
「そうか、悪いな」
「ええ、今日丁渡暇だしね」
「何だよ、暇だったのかよ」
「暇でも行きたくない場所はあるでしょ」
興味がないとだ、暇でもそうした場所には行かないのが人間だ。それは愛乃とて同じということだ。
「そういうことよ」
「そういえば俺もな」
「あんたもでしょ、それは」
「野球でも巨人の試合だとな」
人類の永遠の敵であるこのチームは、というのだ。
「頼まれても行かないな」
「そうでしょ、まあセリーグにはあまり興味がないけれど」
それでもというのだ。
「阪神は特に嫌いじゃないからね」
「それで来てくれるんだな」
「勝つわよね、阪神」
「勝つとは限らないのが阪神だろ」
もっと言えば野球自体がそうだがだ、阪神の場合は特にだ。勝つか負けるかが全くわからないチームなのだ。
「壮絶に負けるなんていつもだぜ」
「何時ぞやの日本シリーズみたいに」
「だからだよ」
「勝つか負けるかは言えないのね」
「どんな相手に対してもな」
「そういうチームなのね」
「そこがまたいいんだよ」
勝つか負けるか、全く予想出来ないところがというのだ。
「勝っても負けてもいいんだよ」
「それで観に行くのね」
「そうさ、じゃあ今晩な」
「ええ、仕事が終わったらね」
「野球観に行こうな」
そ
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