第一章
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かった、けれど二人は別れなくてはならない状況だった。父が事業に失敗して多額の借金を抱えてしまって。
私と母に迷惑がかかる、こう言ってだった。
父は母と別れ私達の前から消えてしまった、父は私達に別れを告げると背を向けて家の玄関を開けて。
その向こうに出てしまった、そして扉を閉めて。
父は二度と私達の前に姿を現さなかった、私が五歳の時の話だ。それからもう二十年も経っている。
「それでね」
「お父さんとはもう」
「ええ、死んだから」
「そうなの」
「私達と別れて五年後に」
このことも覚えている、母は自分が働いて女手一つで私を育ててくれた。私を大学まで行かせてくれたしひもじい思いもさせてくれなかった。
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