最終話 コネクティング
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になっていた。
掌を通して感じるぬくもりが、どうしようもなく心地よい。
「ねぇ、風原くん」
「……今度は何だ?トイレか?」
「もう、女の子にそんな事言わないの!」
「俺に女心を判れと言われてもな……」
デリカシーのない発言に少しむっとした。
風原くんにかこれから色々と教えてあげなくてはならない。
「まぁそれはいいや。……ねぇ、風原くん。私、昨日言ったよね――一緒に新しい幸せを探そうって」
「あぁ、言ったな」
「私、気付いちゃったの」
「お前はいつも唐突だな……何に気付いたんだ?」
横目でこちらを見た風原くんを繋がった右手で引っ張る。
不意を突かれた風原くんの身体は私の方へと傾く。
そして、私は風原くんの唇と、自分の唇を重ねた。
ほんの短い間だったけれど、私にとっては時間は問題ではなくて――これまでの人生で、一番幸せを感じた瞬間。
顔を真っ赤にして目を白黒させる彼に、ちょっと不意打ちすぎたかなと笑いながら告げる。
「今が幸せ。今、私の事を止めてくれる風原くんが居て、風原くんを止められる私がいることが、すごく幸せだよ」
「あっ……う……………」
その本心を晒す事に不思議と恥じらいはなく、ファーストキスを彼にささげるのにも躊躇いはなかった。彼の場合、こちらがいつまで待ってもしてくれなそうだし、と内心で付け加えながら。
「風原くんは、幸せ?」
その問いに、漸く意識を取り戻した風原くんは頭を抱えて唸った。
「ッ〜〜〜!……俺は、どうやらお前には敵わんらしい。……不本意ながらな。不本意ながらだぞ?」
顔を真っ赤にしたままぼそぼそと言う彼の顔を見るのはとても可笑しくて、でもそれ以上に、幸せを共有できていることが何よりも喜ばしかった。
きっとこれから悲しさや辛さが押し寄せて、笑顔ではいられなくなる時が訪れるだろう。
だから今だけは、せめて今だけは――笑顔をくれる彼だけを見つめていたかった。
そんな私を見てため息をついた風原くんは、恥らいながらも、ほんの少しだけ笑顔を覗かせた。
「ったく、お前の緩みきった顔を見ると――恥ずかしがってるこっちが馬鹿みたいだ……」
絡み合う二本の糸は強く固く結びつき、ひとつの運命を紡ぎだす。
希望の光は、求め探すだけでは見つからない。
何故ならば、誰かと交わることで新たに生まれる希望もあるのだから。
-新説イジメラレっ子論‐ 完
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