最終話 コネクティング
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けれど、分かってくれたのだろうか。手島君がとぼとぼと帰る彼に肩を貸しているのが印象的だった。
皆が帰った後、麗衣だけが病室に残った。
「まなちゃんの心、開けた?」
「うん」
「そう……くすくす」
鈴を転がすように笑う麗衣に、私は気になっていたことを質問した。
「麗衣は、風原くんとどういう関係なの?住所とか知ってた割には風原くんは貴方の事をあまり知らないみたいだったし……」
「それはそうよ。だって一方的に知っているだけなのだし?」
「え……それってストーカーって言うんじゃ……?」
その質問に、麗衣は肯定も否定もせずに笑った。
私は背筋に寒いものを感じた。やはり麗衣は、得体が知れない。
嫌な予感がするのは気のせいだろうか。彼女の事も知りたいが、理解できるのはいつの日になるのだろう。そう思いながら彼女の背中を見送った。
病室を後にした麗衣は、誰もいない通路を歩きながら小さく漏らす。
「まなちゃんがあなたに心を開いたってことは、同時に他人にも開かれる可能性が出来たってこと……来瞳ちゃんを仕上げてぶつけるまで結構かかっちゃった。さぁ、後はどんな方法でまなちゃんをいただこっか?来瞳ちゃんに渡してもいいけど、譲渡できるのは半分こまでだよ?歪で可愛い私のまーなちゃん♪」
その色々と不吉な言葉を聞いていた人間は、幸か不幸か誰もいなかった。
= =
話す相手が悉く去ってしまうと、後に残るのは驚くほどに静かな病室と自分の心。
父がもう長くないという話を聞いた時は、ショックだったが不思議には思わなかった。
私が父にした攻撃も、正当防衛の範囲で問題にはならないそうだ。
ただ、これからどうすればいいんだろう、という漠然とした疑問だけが残る。
不思議と不安はない。でもそれは何かを失った喪失感に吸い込まれて表面に出てきていないだけだ。
父にとって、私は母の幻影にしか見えていなかったのかもしれない。当の本人に問いただして納得のいく返答が得られるかも怪しいが、きっとそうなのだろう。
結局父は、母を愛するあまり、私の事は見えていなかったのかもしれない。
考えても詮無きことだが、またむねがずきりと痛んだ。
家族という幻想にずっと踊らされてきたことが悔しいのか。
父にありもしない希望を望んでいた過去の自分が哀れなのか。
あの時、風原くんに止められて手を振り下ろさなかったことは本当に良いことだったのか。
ただ、ひとつだけ分かることがある。
母さんが死んだあの日に、きっともう家族という積木は崩れていたんだろう。だから、もう元の形には戻らなかった。戻れなかったんだ。
「よう、失礼するぞ」
「あっ……」
病室のドアが
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