最終話 コネクティング
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室のベッドの上で律華さんの話を聞いた。
あの後、俺は救急車を呼んで3人とも病院へ向かった。
結局、千代田の父親が倒れた直接の原因は酒の方だったらしく、一命を取り留めたそうだ。
医師の話によると、既に肝臓や腎臓に機能障害が出ており、生きていたのが不思議なくらいだという。これから治療は施すが、もう長く持たない可能性が高いという。当然と言えば当然の結末だが、それでも千代田にとっては辛い話になるだろう。
千代田は筋肉の断裂や打撲、一部の骨にひびが入っていたなどの怪我の為に一緒に入院中だ。
全治数週間。俺よりも重傷だ。俺の方は、硝子の棘が筋や神経をあまり傷付けていなかったらしく、深さの割には大したことはなかった。
当然ながら原因が原因だけに父親は親権を剥奪され、今は一時的ながら保健所預かりになっている。
「千代田ちゃん、立ち直れるかしら」
ぽつりと、律華さんが漏らす。
彼女は父親との繋がりが、精神的に切れてしまった。もう二度と昔のようにあの男を父と呼ぶ気にはならないだろう。残されたのは自分の身体と血縁の繋がった死に体の男に僅かな財産。
祖父母は既に亡くなっているらしく、おじおばもいない。そして父親は余命いくばく。
彼女は既に事実上の天涯孤独だった。
これから彼女は人生で最も大切な時期に、誰一人として身寄りがいないまま過ごさなければいけない。学校でのいじめも、きっと無くならないままだろう。一時的に声をかけづらくなっても、数か月もすればみな忘れるものだ。
だが。
「立ち直ろうが立ち直るまいが、俺は一緒にいてあげようと思います」
「真人くん……」
律華さんははっとした顔で俯いた顔を上げた。
千代田はどうなっても一緒にいると俺に約束した。その代り、困った時に助けてほしいと。
「あいつが嫌だと言って俺を拒絶するなら、俺は殻に籠ったあいつの近くにいて、殻の外に引きずり出してやる……あいつがそうやったように」
やられっぱなしは性に合わない。好きになって欲しいとまで言ってきて、結局はそれに応えたんだ。中途半端で見捨てる気などない。子供っぽいけれど、きっとそれが大事な事なんだと俺は思う。
「そう。そうよね……よし!私もそれに付き合うわよ!」
「本当にあなたはお人好しというか………」
沈んだ顔から一転やる気を出した律華さんに苦笑いしながら、俺は外を眺めた。
今日の空は、晴天だ。
それはまるで天がすべての泥を流しきった気でいるかのよう。
その青天井が彼女の悲しみには目もくれていないのだろうと思うと、それが少しだけ腹立たしいのだ。
= =
一方、悲しみを拭いきれていない少女の病室に、ぱぁん、と鋭い音が響き渡った。
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