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新説イジメラレっ子論 【短編作品】
最終話 コネクティング
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いつも俺につらく当たったわけじゃなかった。優しい時もあった。だからきっと俺の事を愛してくれてるって……でも役所に保護されたあの日、母さんは確実に俺を殺す気だった。首を締め上げて、目まで刺した。視力は無事だったが、怖かったよ」
「………!!」
「恐怖と同時に思った。母さんは俺の事なんて本当は愛してなかったんだって。死んでもいいって俺の事を思ってるんだって。その怒りを、面会に来た母さんに全部ぶつけた」

 もう二度と顔も見たくない。
 こんな痛みを与える奴は家族じゃない。
 あんたの息子に生まれたのが人生で最悪の不幸だ。

「俺を気遣うような態度で接してきたのが余計に許せなくて、言ったんだ。俺は一生あんたの事を許さない。俺はあんたの道具じゃないから、やりたいなら次の子を産んで家族ごっこをしろ……って。それっきり母さんは行方不明になった。後になって、取り返しのつかない事をしたかもしれないって震えたよ」

 そう語る風原くんの声は少し震えていて、感情がこぼれ出すようだった。

「あの時に母さんを追い込んだのは、間違いなく俺だった。家族としての最後じゃなくて、人生の最後になったのは、俺の言葉だったんだ。あの人はきっと――いや、よそう」

 風原くんは、私の目を覗き込むように向かい合った。

「憎くてもいいさ。怒ってもいい。でも一時の感情に任せて袂を分かったら、残った悔恨は二度と崩れないかもしれない。それでもいいのか?……お前は幸せを探すんだろ?父親が死んでも――その命を奪ったのが自分の手でも、お前は未来に自分を幸せだって言えるか?」

 その言葉に、今ならまだ引き返せるんだと言われた気がして。
 助けるんだと思っていた人に、本当の現実を思い知らされた気がして。
 そして――改めて、家族にはもう戻れないんだという実感が濁流のように胸を埋め尽くして。

 悲しみの堰が、切れた。

「う……うぇぇ……ひっぐ!う………うわぁあぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!」
「……今は泣け。俺達みたいなのは、泣きつける相手の前でしか泣けないから」
「かざはらくん……かざはらくぅん……!うっぐ、わぁぁぁぁぁあぁあああああああ!!」

 風原くんの身体を、見捨てないで欲しいと願うようにきつく抱きしめながら、私は泣いた。
 嗚咽は悲嘆の滴と共に、とめどなく、とめどなく溢れ続けた。

 雨は、まだ止まない。



 = =



 市内の病院の一室。あの雨の中の事件から既に数日が経過していた。

「来瞳ちゃんの治療費だけどね……一先ずうちで出そうかと思うの」
「……そうですか。学校の方には?」
「2人分連絡入れておいたわ。これからもう一回詳しい話をする予定」

 包帯に塗れて動かせなくなった自分の左手を見ながら、俺は病
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