第9話 アピアリング
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とは思えないほどに濁りきっていた。やはり帰っていない事に気付かれていたんだ、と今更に後悔する。
「そんなこと、してない!考えてない!!何で……なんでいつも信じてくれないの!?子供の事を信じてよ!!」
「黙れクソガキぃ!!お前なんかがいなけりゃ良かったのに……お前なんか産んだから母さんは死んだんだ!!」
「な……!?」
私の必死の懇願は、耳を疑うような言葉で遮られた。
「子供が欲しいって言うから作ったのに、母さんはその子供だけ残して死んだ!お前を産まなきゃまだ生きてたに違いねぇんだ!!死ぬわけがなかったんだ!!」
「そんな滅茶苦茶な……!」
「口答えするんじゃ、ねぇッ!!」
「痛ぁぁ……ッ!?」
顔面を殴り付けられて、鈍い痛みが左目を中心に広がっていく。酔っ払いとはいえ大の大人の拳だ。小さな女の子を悶絶させるだけの威力はあった。片目を抑えて必死に逃れようと動くが、その瞬間にふくらはぎのあたりを力の限りに踏みつけられた。
足の骨と筋肉に激痛が走り、ぶちぶちと何かの繊維が千切れる音がする。
「いやぁぁぁあああーーーーッ!?い、痛い!痛い痛い痛いぃぃッ!!」
痛みの余りに目の奥から涙が溢れる。顔は涎や鼻水と混ざった涙でくしゃくしゃだった。
なんで、そんなことをするんだろう。
なんで母さんが死んだのが私の所為だなんて。
貴方は私の父親でしょう?
貴方は私の親子でしょう?
ずっと言いたかったけれど言えなかった疑問。
言えば、なにか決定的なまでに大切だったものが崩れてしまうのではないかと恐れていた質問。
でも――私は、風原くんにそうしたように、父にも向き合わなければいけない気がして。
風原くんは逃げていたように、私も父からずっと逃げていたのだ。
今だけ、あなたの勇気を貸して。父の言葉に「だからどうした」と正面切って言えるだけの勇気を、貸して。
「痛ッ……ぅう……!!お父さんは、私の事が嫌いなの……ッ!?」
「当たり前だ!!気に入らねえんだよ……お前の事が!」
「何でよ!?お母さんが死んじゃう前は遊んで切れたじゃない!葬式のときだって一緒にこれから頑張ろうって言ったじゃない!!あれは……ッ、嘘だったの!!?」
痛みにこらえながら、慟哭のように叫ぶ。
自分で情けなくなるほどに震えた声で、真意を問いただした。
「嘘かどうかなんてどうでもいいんだよぉッ!!母さんが死んだくせに、母さんみたいな顔して家事をしやがる!母さんみたいに飯を作りやがる!腹立つんだよ……そこは母さんの立つ場所なんだよ!!お前みたいな母親に似てるだけのクソガキが、代わりに立ってのうのうと母さんみたいに居座ってんじゃねえぞぉぉぉぉーーーーッ!!!」
その言葉を聞いて、ああ、と
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