第7話 アンダースタンディング
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に無頓着そうな男は、結局は節操もなく他の女に手を付けて、それでも史華は彼の事を嫌いになれずに離婚を言い出せない。その狭間に揺れながら、ひたすらの子育て。
憧れていた結婚生活からかけ離れた家庭。
溜まる不満やストレス。
次第にそれは、愛の結晶である筈の息子へと向かっていったらしい。事実、児童相談所は風原真人が虐待されていた事実を認定して、親権停止命令を下している。彼自身の身体にも、火傷や傷など小さな虐待の痕跡がいまだに残っている。
海外にいって以来連絡を取っていなかった律華は、聞かされた事実に耳をふさぎたくなった。自分の妹がそのような事態に陥って、子供に当たっていたなど考えたくもなかった。あの時、子供の写真を送ってきた時はあんなにも幸せそうだったのに。
その後、風原真人はエスカレートした虐待によってとうとう重傷を負い、虐待の事実が露見した。
その日のうちに、父親である風原真治は夜の街に繰り出したっきり家に戻ってこなかった。面倒になって逃げたのだろう、と周囲合は口をそろえた。
そして母親は、数日後に風原真人と面会したっきり、その行方をくらました。目撃証言は少ないが、彼女は半ば心神喪失状態にあったのではないかと推測されている。ともかく、その足取りは未だに掴めてはいない。
彼はその後、身寄りが見つからなかったために一旦保護施設へと送られ、紆余曲折を経て九宮家が保護することになった。保護施設内でも揉め事があったために仮でいいから家庭に入れた方が良いという判断だったそうだ。
ところが、彼はそれを拒否した。
手続きで既に親権が移っていたし、「子供には罪はないから」と疎遠だった娘の子を受け入れる準備をしていた九宮家に辿り着いた彼は、酷い顔をしていたという。
最初の内は食事すら取らず、風呂などに入らせようとすると酷く暴れたらしい。やがて自分で出来る事は自分で勝手にするようになり、自分の行動に自分以外が関わることを極度に嫌い、決して周囲の誰にも気を許さなくなったそうだ。
律華は、妹が最も苦しんでいた時期に連絡も取ってやれなかったことに責任を感じ、彼を引き取ることに同意した。こうして、彼女と彼の共同生活が始まったのだ。
「虐待……母親から」
そんな事実が存在すること自体が、私にとっては認めがたい。
それを自分の妹が行っていたと知った律華さんは、もっと認めがたかっただろう。
「信じられない気持ちだった。やる時はやる子だったけど、暴力を振るうような子じゃなかった」
一通り話し終えた律華さんは、遠い目をしていた。とても遠くて、私には一体どこを見ているのかさえも分からなかった。
「実際に何をされたのか、あの子は一言も言わない。ただ、私に体を触れられると反射的に振りほどこう
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