第7話 アンダースタンディング
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分の部屋。暫くは出てこないと思う。でも、真人くんと会う前に少しだけ私の話を聞いていってちょうだい。保護者として未だにあの子の心を開けない、情けない大人の話を」
今まで誰も向かい合う事の出来なかった風原くんの、私が知らない姿。
「きっとあの子は自分から話そうとはしないから……もし貴方が本気で真人くんに向き合う覚悟があるのなら、どうか私の話を聞いて、ね?」
自分を見失ったときに、たった一つだけ心に残っていた男の子の背中。
それを追い求めて、私はここに来た。
意を決して、自らも切り出す。
「……私、風原くんの事を何も知らなくて、だから……だから、風原くんの事を教えてください」
そこに無くしてしまった自分の意志と、風原くんの真実があると信じて。
= =
風原真人という少年にとっての不幸の始まりは、父親が子供に無関心だったことだろう。
彼の父親である風原真治という男は、どうにも身分の知れない遊び人だった。どんな女性とでも一緒に過ごす快楽主義者で、一通り満足したらさようなら。そんな人間だった。
そんな彼と肉体関係を持った史華は、彼に惚れ込んでずっと入れ込み続けた。
具体的にどのようなことが起きたのかは本人だけが知るところだが、2人はその後子供が出来たことを理由に、所謂「出来ちゃった結婚」をする。
史華の結婚は駆け落ち同然で、家族親族にも伝えていなかった。元々史華は実家と折り合いが悪く、独立後の付き合いは全くと言っていいほどなかった。辛うじて連絡を取っていた律華といくらかの友人を呼び、結婚式は問題なく執り行われた。
その後、律華は時折妹からの連絡を受けながら、会社の方針で数年間海外の支部に勤めることになり日本を離れる。
日本を立ったのが2人の結婚から数年後。日本に戻ってきたのも数年後。合わせておおよそ10年といった所だったろう。久々の日本に懐かしさを感じながらも実家へと戻った律華。そんな彼女に、家族は思いもよらぬ言葉を投げかけた。
「律華。この子を引き取ってくれないか。史華の子なんだが、私たちには全く懐かないんだ。お前、史華と連絡を取っていたんだろう?お前ならひょっとして……」
案内された先には、簡素な部屋に籠ってベッドの上で膝を抱える一人の子供。
自分で齧ったのかボロボロになった爪をさらに齧り、目には深い隈。何一つ言葉を発さずにその不健康そうな体を丸めるその子供が、あの写真に合った妹の子だなどと誰が信じられようか。
――全ては又聞きの話でしかないが数年前、律華が海外に行く前後ほどから、史華はおかしくなっていったそうだ。
原因は夫の浮気と、夫婦間の温度差。
そしてそれに重なる形で圧し掛かった育児。
あの物事
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