第6話 イグノリング
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けておいた。
当の彼女はいつものように、何を考えているか分からない妖艶とも言える笑みを浮かべている。普段は沢山の人に囲まれて、いじめる側で、何一つ苦労もしていないような嫌な女。それでも本当に虐めがやりたいのか、何に対して笑っているのかは誰も知らない。
そんな彼女が私に直接話しかけてくるのは、珍しい事だった。
「ねぇ来瞳ちゃん、気付いてた?今日の風原くんってば凄く虫の居所が悪かったのよ」
「……なんで?」
麗衣はおかしそうに、私を指さしてまた笑う。
「あなたのせいに決まってるじゃない。くすくす、くすくす」
「私……?な、なんで……」
理解が追い付かず、刺された指を呆然と見る。
だって、私には彼と接点がない。
彼と特別な関係でもないし、まだ出会って数日しか経っていない。
何故、私の所為なのか。
いや、それ以上に――なんで私の所為だと言われた瞬間、胸にまた痛みが走ったのか。
どうでもいいと嘯いた心に刺さるようなこの痛みは、なに?
「そりゃそうでしょ?まなちゃんはあなたに強くなってほしかったのに、あなたは何があったか一晩ですっかり腐っちゃった。だから今日はご機嫌斜めなの」
「……腐った?」
「言い方を変えればヒネクレ?それとも思考停止?相手と対話することを完全放棄して、どうせどうせと呪文を唱えて自分の殻に引きこもる。安全圏に閉じこもって不幸ごっこは気が楽よね?」
「……あなたに何が分かるの」
「『分かろうが分かるまいが俺はお前が気に食わない』……って、まなちゃんなら言うね」
こつ、こつ、と私の周りをゆっくりと回りながら、囁くように流し込まれる声。
相手の言う事を聞きたくない筈なのに、音の振動は鼓膜を通して脳に認識され、情報は精神に干渉する。
彼女の言葉の一つ一つが、私の心に刺さるような――いや、通りぬけるような――
「わ、私は……腐ってなんか、ない……逃げてなんか」
「声が震えてるよ?」
「う、うるさい!大体……大体、なんで風原くんが私のことなんか気にするのさ!」
周囲を回っていた麗衣はそう言い、くるりと振り返ってにっこり笑った。
「まなちゃんは貴方の事が大嫌いなの」
「……!!」
また、胸に突き刺さるような痛み。
何で?何でなの?
何も辛くなかったし何も望んでない筈なのに、なんでこんなに痛いの?
麗衣は笑う。
くすくす、くすくす。
「でも、大嫌いだからこそそこから立ち直ってほしい。だから今まで、影ながら貴方の事を守ってたのよ?本人は絶対に認めないと思うけど。くすくす、くすくす」
「……嘘よ、そんなの。風原くんは何もしなかった!」
風原くんは強いから、人の痛みが分からない。だから助けてなんてくれない――そう思
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