第6話 イグノリング
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いじめられるし。
なら何をやっても、そして何をされても私にとっては一緒だから。
みんなと違って。お前たちいじめっ子とは違って。
やりたいんなら気が済むまでやればいい。
どうでもいいし。
誰に嫌われようが、誰に目をつけられようが、どうでもいい。
私が幸せになれないなら、後は何がどうなっても――どうでもいい。
私はそんな世界で無気力に生きて、無気力に死ねば、それでいい。
くすくす、くすくす。
聞き覚えのある笑い声が耳を擽った。
でも、それもどうでもよかった。
= =
あれから数日経った。
何日経っても、周囲は私を奇異の目で見ることを止めない。
それが――煩わしい。
「あれ、来瞳ちゃん今日も元気ないね?なんかあったの?」
喧しい。
「千代田さん、あの……いや、なんでもない。ごめん……」
鬱陶しい。
「ねぇ、クルミ?クルミってば!!」
「……何?」
どうでもいい連中が、どうでもいい話を振ってくる。
私のことなどどうでもよく思っていて、私の人生に関わることもないような案山子。喋る案山子。隣人のふりをした唯の他人が、体面だけ保って馴れ馴れしくも話しかける。
「何って……今のアンタ酷い顔してるわよ?大丈夫なの?」
「別に……」
「ねぇ、クルミ?本当に大丈夫?無理してない?」
さも心配そうな顔で覗き込んでくる香織のいたわりの言葉も、酷く白々しいものに聞こえた。
彼女は味方ではないから。敵味方以前に、きっといなくても同じような人間だと思われていて、思っているから。
「ねぇ、ひょっとして家の事?力になれるかは分かんないけど、辛いんなら相談くらい――」
「いらない」
だから、貴方の話もどうでもいい。
香織はその言葉を受けて冷水を浴びせられたように身を強張らせ、喉を詰まらせたような苦しそうな表情を見せた。
でも私は興味がなかったので、それ以上見なかった。
一瞬、風原くんがこちらを横目で見た。その目には、昨日の時のような優しさは感じず、ガラス玉に覗かれているような無機質な冷たさを感じる。視線は一瞬で、すぐに私を見るのを止めた。顔色でも窺っていたのか――いや、彼に限ってそれはないか。
周囲が私の顔色を伺っていた。でも、どうでもいい。
普段とは違う優しい言葉も掛ける。でも、うわべだけ。
心配されているのか、蔑まれているのか、そんな違いも気にならない。
感じるのは空虚と、気楽さ。
背負う物も負う物もないことが、こんなにも気楽だなんて思わなかった。もう気にしなくていいし、考えなくてもいいんだ。ただ俯瞰して、周囲の全てを「どうでもいい」の一言だけで片づければそれでいい
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