第5話 ウィーピング
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られないように、少年は振り返りもせずに自分の部屋へと一直線に向かった。また自己嫌悪と不信の狭間を彷徨っているのだろう、と推測した女性は嘆息する。
「まだ駄目か……ただ呼び止めるために手を取ることさえ未だに許してもらえない……ちょっと悲しいかな」
赤く腫れた掌を一瞥した女性はもう一度嘆息し、椅子に座ってテーブルに肘をついた。
「癒えないものね、心の傷って」
女性はテーブルの端にあった写真立てを持ち上げて、それを覗きこむ。
写真にはへらへらと笑う男性と、その横で心底幸せそうに微笑む女性。そしてその女性が抱える一人の赤ん坊が写っていた。
それを見た女性は口元を締め、呟く。
「どうしてあなた達は真人くんを捨てたのかしら。ねぇ、史華……」
子供――風原真人を置いて夫共々失踪してしまった自分の妹を指でなぞりながら、律華は届くことのない質問を漏らした。
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