第5話 ウィーピング
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今は――
今、は?
今を乗り越えたら将来は明るくなる訳でもないのに、乗り越えた所で何の意味があるのだろう。
子供は親に守ってもらい育つものだ。なら守ってくれる人がいない私は?
『お前みたいなやつを助ける馬鹿なんかこの世界にいると思ってるのか!!』
親からさえ愛を受けられない私に、望む未来など訪れるのか?
友達も信頼してくれる人も味方にはなってくれない私に。
負け犬と罵られた私には――訪れ、ない?
ぷつん、と心のどこかで弦が弾けた。
風原の言葉が、急激に意味のないものになっていく。
彼は私に期待していたのではなくて、私がここから這い上がれはしない事を分かっていて言ったのか。それとも、這い上がる為の強さが私にない事に気付いていなかったのか。
自分のみを自分で守れなんて、意味のない助言だったんだ。
きっと、風原君は自分ならできるし他人にも出来るって思ってたんじゃないか。
事情や真実を知らない幸せな人が、どうでもいい他人にいい加減に吐いたたわごと。
風原くんは強くて何も知らないからあんなことが言えるんだ。
私の事なんて何も知らないからあんなことが言えるんだ。
私と風原くんとじゃ何もかも違う。
羨ましいな。きっと風原君は、よっぽどいい人たちに囲まれてるのかな。
それに比べて私は――誰も助けてくれない。
助けてくれる人がいないのに今を乗り切っても、意味ないじゃない。
全身から力が抜け、床の上に体を転がす。
今まで何のために耐えたんだっけ。
今まで何のために頑張ったんだっけ。
変わってしまった私の世界はいつかは元に戻るって思ってた。でも実際には父は元には戻らないし、母は帰ってこない。頼れる人間など現れることはないし、折れた翼がはばたくことは二度とない。
まるで崖の下から上に広がる狭い空に手を伸ばすような。
そしてそんな行為が実は無駄でしかなかったことに今更気づかされたような虚脱感。
「生きてる、意味がない」
口に出して、その言葉に何ら違和感を感じなくて――心に空いた大穴に納得した。
= =
「――俺に触るなッ!!」
ぱしぃん、と大きな音を立てて振り払われた自分の手を見て、その女性は「またやってしまった」と迂闊な自分を悔いた。
手を振り払った中学生くらいの少年は、警戒と恐怖に満ちたその双眸を閉じて呼吸を整えた。
「……すいません。今まで俺の世話をしてくれたことには、本当に感謝しています」
「ありがとう。でもいいのよ……わたしが好きでやってる事なのだし。今のも私が悪かったわ。これから気を付けるから……」
「………ッ」
自身の胸に渦巻く負の感情を抑え
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