第4話 アプローチング
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俺の教科書は最初からあったぞ?」
激昂するばかりの浜崎くんと、それを歯牙にも掛けていない風原くんの論争は平行線をたどっていた。
しかし、浜崎くんの教科書を風原くんが取ったのなら、教科書に名前が書いてある筈だからすぐに判るのではないだろうか。
そんな疑問に気付いた香織が補足してくれた。
「浜崎くん、教科書に名前書いてなかったのよ。馬鹿だよねぇ、あれだけ先生に書けって言われてたのに忠告を無視するからこうなるんだよ」
「そうなんだ……でも、教科書に名前書いてないのって他にも探せばいるんじゃないの?それを、何で風原くんって決めつけてるの?」
「さあ?」
しかしそうなると、さっき私に見せてくれたあの教科書が……?
結局その諍いは決着がつかないまま終了し、浜崎くんは憤然とした目つきで風原くんを睨みながらも退散していった。
そのどこかぎすぎすとした空気は、授業終了後も僅かながらクラスに漂い続けた。
気にする必要はないと理屈でわかっていても、実際に嫌な空気を肌で感じてしまうと忘れるに忘れられない。いつもの親しい友人と過ごしている筈の人間も、どこか盛り上がりに欠けてよそよそしくなる。風原くんと浜崎くんの諍いが起こした波紋は、やがて帰路に着いたり部活動に参加するために皆が物理的に散り散りになるまで収まらなかった。
不和の予感。
後の諍いの予感。
また、風原くんを中心に何かが起きる。
私は何となくその気配を肌で感じつつ、それでも暫く私に矛先は向かわないだろう――と素直に安堵する事が出来ないでいた。
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