第2話 ムービング
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意は感じない。顔を上げてそちらを見ると、そこには香織がいた。顔は緊張と不安で彩られ、焦っているように見える。
「来瞳、ちょっとこっち来て」
「え?あ、ちょっと……?」
机の椅子から立たされ、クラスの端の方まで強引に引っ張られる。
ここまで彼女が強い態度に出るのは珍しい、と目を丸くした。暫くされるがままに引っ張られて彼と遠ざかった後、息を整えた香織が私の肩を掴む。
「あ、アンタねぇ……前からちょっとマイペースだとは思ってたけど、風原に話しかけるなんてどういう神経してんの!アイツの事知らない訳じゃないでしょ!」
「か、香織?ちょっ、痛い……」
普段のどっちつかずで笑っている姿からは想像できない荒々しさで肩を揺さぶる香織。きつく掴まれた肩と揺さぶられる体の痛みから思わず抵抗するが、力が足りずに顔を顰める。
そこに至って香織は漸く私が本当に事情を理解していない事に気付き、苛立たしげに頭をがりがりと掻いた。
「……って、そういえば来瞳はそういえば入学式から何日かはインフルエンザだか何だかで学校来れなかったんだっけ。もう……いいこと、来瞳!?」
「は、はい!……何?」
「あの男は風原って言ってね……入学初日に暴力事件を起こして今日まで謹慎を受けてた危ない奴なのよ!」
「え……?あ、あの人が……?」
未だにふてぶてしい態度で机に座る男子――風原くんを見やる。
確かに親切には見えなかったが、そんなに喧嘩早いようにも見えない。しかし、確かに言われてみれば周囲は彼に注目しつつもあまり関わり合いになりたくなさそうに中途半端な距離を取っている。
――香織の話によると、風原真人という男子は入学前から素行に問題のある生徒として教師には注目されていたらしい。
周囲の生徒達がそれを知らなかったのは、彼が小学校の卒業と前後して遠くから引っ越してきたために情報が無かったからだという。
だが前の学校では教師に楯つき、協調性がなく、暴力を振るっては謝りもせずに帰ってしまうという不良のような存在だったらしい。
そんな彼も入学式の時までは少々無愛想で口数が少ないだけの男子に見えた。
そして、その日の午後に旧校舎で事件を起こした。
彼は放課後に校舎をうろついている時に、上の階にいる上級生にスリッパを投げつけられた。
高い場所からやたらと物を落としたがる上級生が、ベランダから下級生の反応を見て楽しむ遊びだ。
スリッパを届けに来る律儀な人間なら舎弟のように扱い、スリッパを捨てたり投げ返してくる人間は暇つぶしがてらにいじめ、教師に言いつけるようなら一目散に撤退して教師の反応を楽しみつつ、密かに相手にいじめの口実が出来たとほくそ笑む。そんな馬鹿みたいな事を実際にやっていたらしい。
そし
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