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新説イジメラレっ子論 【短編作品】
第2話 ムービング
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何に怒られているのかも分からずに。
 今まで積み上げてきた物が音を立てて崩れるように。

 軋んだ歯車は生活を崩し、崩れた生活は学校に響き、響いた揺れは私の学校での立ち位置を歪めていった。
 元々体が強くなかった私はからかわれる対象だったが、母が死んだという事実を中心に友達やクラスメートが私に抱く感情は少しずつ歪んでいった。思春期という精神的な均衡を崩した状態が、通常では起こりえないような精神構造の変化を産んだのかもしれない。

 いや、もう理由なんてどうでもいいのだ。
 現実に結果が表れている。いじめという形で。
 今更理由なんか考えたって、どうしようもないのだ。

 これからいつものように一人で隠れるように食事を取って、隠れるようにシャワーを浴びて部屋に籠る。そして明日には空腹を無視して学校へ行って、逃げ場のない教室で精一杯自分の存在を隠そうとする。
 それが私の日常で、生活サイクル。今、最も正しい筈の行動。

 でも、思う。

 ――いつまでこんな生活を続けなければいけないのだろうか。
 握った箸に力が籠って、挟んでいたほうれん草おひたしが皿からテーブルへと落ちた。
 お皿の上から爪弾きにされたようなそのおひたしを箸で拾い上げて、食べる。
 食べ進めれば食べ進めるほどに、段々と自分の料理の味が分からなくなっていく。
 美味しいかと父に聞くことも出来ない食卓を孤独に過ごしていると、胸に穴が開いたような痛みが微かに響いた。

「………っ、ぐすっ、……ぅぅぐ……」

 自分で作った夕飯は、いつになくしょっぱくて水っぽかった。

 なんとなく、こんな自分が惨めになった。いつになったら抜け出せるのかと、誰かに問い詰めたいほどに。
 しゃくりあげる悲しみと涙は、父をまた苛立たせる。それ以上は泣くまいと必死にこらえて、結局堪えきれずにその日は布団の中で密かに泣いた。



 = =



 ――翌日。

 その日の教室は、明らかに空気が違っていた。
 いつもならば教室の出入り口にもたれかかった女子達が道を塞ぐようにおしゃべりをして、椅子を傾けて遊んでいる男子たちが道を塞ぎ、最後に自分の机の中に何も変化がない事を確認してから座る。そんな通りづらい道なのに――やけにみんな静かだ。

 静かな時というのは大体相場が決まっている。
 同級生の内でいじめる側に近い生徒が大怪我をしたとか、先生に派手に叱られたとか、あるいはこれから憂鬱になるであろう連絡を先んじて入手している時とか。そういう全体の気が沈んでいる時は、私が視界に入っても嫌がらせをする気は起きないらしい。
 その方がこちらも楽でいい。

 でも、教室を進んでいくと、段々と視線が私に集まってくる。
 まるで、大きな失態を冒したことに
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