第2話 ムービング
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のおつむは?」
「そんなに静かな所にいたかったら保健室でもトイレでもゴミ捨て場でもどこでも好きな所に行けばいいじゃない!だーれもそれを止めたりしないわよ?」
「――何で俺がお前らに場所を譲らなきゃならない?馬鹿がこそこそと俺の場所に踏み込んできたのに、なんで先にいた俺がおめおめ帰らなきゃならん?俺は嫌だぞ。お前らに場所を譲ってやるなんぞ死んでも御免だ」
「うっ――!?」
女子生徒を威圧するように首を傾けて見下ろす男子。その目が抱く強烈な拒絶の意志に、いじめっ子たちは押され、気味の悪いものを見るように後ずさる。
後ずさった分の距離を、男子は躊躇いもなく詰めた。
それを繰り返し、二歩三歩と追い詰められた女子達は、そこで漸く折れた。
「い、いこっ!これ以上こんな奴に付き合う必要ないよ!」
「そう、よね。いこいこ!」
「何なのよもうっ……!」
いじめられっこが去るのをくすくすと笑いながら見送った麗衣は、その笑顔を男子の方に向けた。
「あーあ、みんな意外と臆病なんだから。マナちゃんも、駄目だよそんなに女の子を睨んじゃ?優しいんだからもっと周りにやさしくすればモテモテなのにー」
「さっき『黙れ』と確かに言ったぞ。同じことを言わせるな」
「くすくす、くすくす。じゃあね、クルミちゃん?これからはまなちゃんに守って貰えばいいんじゃない?」
その顔は、今までの得体の知れない笑顔とは違って感情のこもった物だった。
初めてこちらに人間を見る目を向けた彼女は、軽い足取りで口笛を吹きながらその場を後にしていった。
彼女は、彼がここにいるのを知っていて態と今日のいじめを長引かせていたの?
一体何のためにそんなことを。
こうなることも知っていて、態々わたしを助けるような状況を――私を虐めるようけしかけたのに?
分からなかった。何も、分からなかった。
ただ、呆然とする私の目の前に、気がつけば手が差し伸べられていた。
伸びた手の主は、あの男子。威圧感を放つ空気に気圧されて、身体が縮こまる。それでも何か言わなければと、もどかしく喉を動かした。
「あ、の……?」
「とっとと立ってお前も帰れ」
「は、はい!」
直ぐに差しのべられた手を握ると、力任せに引き起こされた。
非難の声を出そうとしたが、体格に勝り眼光の鋭い彼の顔を見ると、出そうとした非難の言葉が喉に戻ってしまった。
改めて、正面からその顔を見る。
降りてきたときの恐ろしい目つきで気付かなかったが、落ち着いてその顔を見てみればそこにいるのはどこにでもいる普通の男子に見えた。
ズボンの裾をだらしなくずるずると引きずっている訳でもなく、整髪料で髪形を調整している訳でもなく、ちゃらちゃらした金具を身に着けている訳でもない
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