第1話 ビギニング
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情を引き摺りだし、肯定し、祝福するように囁く。
その言霊が、いじめっ子たちの耳にはどうしようもなく心地よく。
鈴を転がすような声で、人を醜い判断へと誘うその姿は毒蛾のようで――ただただ理解できなかった。
「黙ってないで何とか言いなさい……よッ!!」
いじめっ子の一人が平手を振るった。頬に衝撃が走り、身体が床に投げ出される。
急に現実に引き戻されたような、じわりとした痛みが広がった。
「ちょっと、顔はやめなさいってば!いくら先生たちが馬鹿だからって流石にそれは面倒になるでしょ!」
「だって、コイツ人の言う事を……!!」
「別にいいじゃんちょっとくらい。ねー麗衣ちゃん?」
冷たくて埃っぽい。惨めな私をさらに惨めな気分にさせた。
体中が痛い。でもそれより、胸の奥が締め付けられるように痛い。
結局どんなに相手の機嫌を損ねず過ごそうとしても、最後にはこうだ。
罰、罰、罰。
教科書や私物を隠される罰。
個室に閉じ込められる罰。
髪の毛を引っ張られる罰。
何かをやらされる罰。
理不尽にさらされるだけで逆らう事も出来ない自分が悔しくて、情けなくて。
でも助けを求められる人がいないんだから、どうしようもなくて。
いつかこの嵐が去って光が当たる瞬間を、ただ待っているだけ。
いつだって私は与えられることを待つことしか出来ない。
この瞬間のこの出会いも、結局は与えられたものだったから。
「――ところで、まなちゃんは助けてあげないの?」
その出会いに、その瞬間は大した価値を感じていなかった。
それが運命的なまでの価値を持っていたと知るのは、ずっと後の事。
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