第1話 ビギニング
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誰かが私を見て、いつ虐めようか、どう馬鹿にしようか話し合っている。
横?前?後ろ?それとももっと遠い場所?
くすくす、くすくす。
私を見ないで、私を笑わないで、私にかまわないで。
最近は、ただただそんな事ばかり考えながら学校を過ごしてる。
= =
唯でさえ細い腕が、手首をねじるように強引に強引に引っ張られる。
引かれて引かれて、気が付けばいつもの場所。
先生も殆ど通ることがない旧校舎の階段の隅にある死角に、今日も強引に連れ込まれた。
じめじめしてて、埃っぽくて、寒くて、そして誰も助けてくれない場所。
何度もここにきて、罵られ、お腹を殴られたりした。
二度とこんな場所に来たくないのに、何度でもいじめっ子たちに連れて来られる。
「痛っ………や、やめて……!」
「なぁに大袈裟に痛がってんの……よっ!」
もう、正当性とか論理性などという人間の理屈がここにはなくて、彼女たちはただ不条理を私にぶつけて愉快気に笑うだけ。
「いつもカワイコぶっちゃって。そんな態度取ってれば関くんが助けてくれるって狙ってんじゃないの?」
「え〜?やだサイアク〜!こういう猫かぶりちゃんムカつくよね〜!」
「そんな……私はただ普通に――」
「喋んないでくれない?くっさい息が漏れてて吐きそうなんだけど。カワイコぶりのガリガリ女がさぁ!!」
私はその理不尽が去るのをただひたすら待つ。従うし、言うし、される。
それでも諾々と従う。下手に逆らおうものならば何をされるか分からない。
口の中に上履きを詰められた苦しさがみんなに分かるだろうか。
生きた蚯蚓を口に入れられることの嫌悪感が想像できるだろうか。
鳩尾を執拗に蹴りつけられて嘔吐するときの惨めさを理解できるだろうか。
言葉の刃で謂れのない罪を糾弾されて土下座をさせられる不条理を実感できるだろうか。
はい。ごめんなさい。
そうです。ごめんなさい。
違います。ごめんなさい。
ごめんなさい。
受動的に自分の喉から吐き出される言葉を、どこか他人事のように聞きながら、内心では恐怖を上回るほどの無力感が心を支配する。
そんな私を、あの女の子がいつものように見下ろして笑っている。
くすくす、くすくす。
いつもいじめっ子たちの中心にいて。
いつも手が汚れない所で笑ってて。
でも私には唯の一度も手を出さなくて。
いつもああやって自分のそそのかした人間を眺めて一人で笑っている。
西済麗衣。
いつも誰かと一緒にいて、いつも目立たずクラスにいて、いつも何かに笑ってる。
人当たりの悪いことは言わない。ただ囁くように、相手に呟く。
相手の負の感
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