第1話 ビギニング
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を断たない私の気持ちを。
いや、分かっていてもいなくとも、彼女はきっと変わらない。触れたら危険そうな場所には触れず、当たり障りのない付き合いを続けるだけだろう。
「返事も返さない余裕の表情。来瞳ちゃんってばクールぅ」
「茶化すなよ。あの子気弱なんだから」
クラスメートの手島くんが茶化し、それを関谷くんが諌める。
だが当の手島君は気にした様子もなく今度は関谷君の方を茶化し始めた。
「お?なになに、お前来瞳ちゃんに気があったり〜?」
「なっ、するかバカッ!……あ、いや今のは違うんだ。クラスメート以上の目で見てる訳じゃないってだけで……」
関谷くんは自分の発言がまるで私の事を嫌いみたいに言ってしまったことに気付いて慌てて釈明するが、私はこの話を一刻も早く終わらせたかった。
話を長引かせたくないという事を、彼にはいい加減悟って欲しい。
「……いいよ。気にしてないから」
「そ、そう……」
「やーい嫌われてやんの」
「俺はたった今、お前のことが嫌いから大嫌いになったぞ……!」
手島くんは単なるお調子者で、いつも誰にもああして茶々を入れたがる。
でも、あれをされるたびにやられた相手は目立つ。単に普通の子が目立っても忘れられるが、虐められっこは目立つだけで叩かれる理由にされる。
だから、私は手島君が嫌いだ。きっと本人に悪気はないんだろうけど、関わらないで欲しい。
関谷はこのクラスの委員長で、時々口が悪いけど真面目なひとだ。
でも関谷くんは女子の虐めについては余り知らない。だからどんくさい私のフォローをしてくれるのは有り難いけど、彼が私にかまえば構うほど後でのからかいや暴力が強くなる。
だから、関谷君は嫌いじゃないけど私には関わらないで欲しかった。
誰にも構ってほしくない。
中途半端に助けないでほしい。
構われれば構われるだけ、またいじめられる。
「………っ」
背筋をすり抜ける嫌な視線と、笑い声。
くすくす、くすくす。
教室の一カ所から、同級生の誰かがこちらを見ている。
誰のものかも分からない笑い声が耳に纏わりつく。その笑い声が、お前を見ているぞと嘲笑する。
――また男子に気を引いて欲しくてそんなことしてるの?
――千代田の癖に生意気にも目立っちゃって。
――これは今日もおしおきかしら?
そんな含みを持った、小さく歪に吊り上げられた頬。
見えなくたって、すぐ後ろにそれが存在して、私の周りを囲んでいるような感覚。
引き摺られるような恐怖に息が詰る。平静を装う余裕を保っていられないほどに、得体の知れない重圧に締め付けられる。
くすくす、くすくす。
誰かが私を笑ってる。
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