第1話 ビギニング
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何で、こんなの。
こんなの。
こんな――こんな思いまでして、生きて行かなきゃいけないの?
ただ普通に過ごしている時でさえびくびくしなきゃ、私は生きていけないの?
逃げたい。でも逃げ場がない。親戚もいない。家族も頼れない。
お金は持ってない。最近は給食料金が卒業まで保つか不安でしょうがない。
何で私ばっかり、こんな目に合わなきゃいけないの。
私だって、皆みたいに――
ねえ、君は?
学校が始まってから殆ど教室に来ない君は、生きていたいの?
席替えで隣の席になったのに顔も知らない君も、ひょっとして同じ苦しみを味わっているの?
君は、私の味方になってくれるのかな。
= =
私立天田中学校は、質が悪い中学校だ。
部活動はそこそこ盛んだが、生徒の質はあまり良いとはいえず、不良生徒が問題を起こすことも少なくない。教師の監視も行き届いてはおらず、中途半端な対応がいじめの温床を生み出している。
体育館は雨盛り。ベランダからは教科書だの唾だのが平気で落ちてくる。教室内では泥棒が横行するし、掃除を真面目にしないものだから教室内は汚いものだ。自転車などもはや盗むのが当たり前になっているので、厳重に施錠するか持ってこないのが常識だ。
上級生は下級生に無理やりいう事を聞かせて遊ぶし、授業中はやかましくてとてもではないが集中できない。たまにやる気のある教師が来ても、モンスターペアレントに負けてノイローゼになった挙句行方をくらますのが関の山。それも生徒が態とそうなるよう誘導した結果だ。
教師の弱腰体質も、生徒の腐った体質も、全く変わることなく存続していた。
その方がきっと、あの人たちにとっては面白い環境だったのだろう。
そんな学校に、成績も比較的優秀である千代田来瞳が入学することになった理由は、別に何も難しい話ではない。一番近い学校だからと親が勝手に決めたのだ。
気が付いた時には既に入学が決まっていた。
何故勝手に決めたのか、と問いただしても、お前は親の言うことが聞けないのかと怒鳴り散らされるばかり。母さんが生きていればちゃんと話してくれたのに、と思わず漏らすと、その日は家を閉め出されて家に入れてもらえなかった。
小学校の頃、母さんは死んでしまった。
死因は数年前にやってきた未曾有の大台風。母さんは消防士をやっていて、その時は確か避難誘導を率先して行っていた。
そして――そして、予想以上の降雨量の所為で、母さんの居た地区は川が決壊してしまった。大自然の齎す容赦ない濁流は、避難民十数名と共に、驚くほどにあっけなく母さんの命を飲みこんでしまった。
沢山泣いた。沢山慰められた。沢山悲しんで、それでお母さんが
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