第1話 ビギニング
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私が馬鹿にされるのは、割といつもの事だった。
他の人より体が弱くて色白だったから、周囲から浮いていたのもあるんだろう。
子供の世界というのは、目立つというただそれだけの理由で理不尽な嘲りを受ける。
出る杭は打たれ、周囲の話や趣味について行けない子は孤立する。
AよりBが好きとか、自分ならそんな考え方はしないとか、そんな目立つことを一言でも言ってしまえば後は散々からかわれるだけだ。
そして私が、からかっても仕返し出来ないほど非力なのをいいことに、悪戯はどんどん悪化の一途を辿る。
最初は男子の間でどんな女の子が好きか、とかいう話にたまたま私の名前が挙がったらしい。
それが、生意気だとあの連中は言うのだ。きっと本当は切っ掛けなんて何でも良くて、ただ自分の不満さえぶちまけられればそれで良かったのだろう。
私の机の中に汚いゴミや虫の死骸を入れたりする。
すれ違いざまに足を引っかけたりする。
態とこちらは我字を書くような持ち上げ方をする。
トイレ中に、個室の中に「いろんなもの」をぶちまける。
嫌になって先生に助けを求めた。
でも先生はそれをみんなの目の前で口頭注意するだけ。クラスのみんなは誰が虐められているかなどとっくに知っているから、晒し者のようなものだ。結局は教師に頼み込んだのが気に入らないと更に虐められ、何の解決にもならなかった。
親に助けを求めようかと思った。
でも、母はとっくに死んで、父はそれ以来酒に溺れてばかりしている。虫の居所が悪いと私にさえ手をあげ、「そんなことも出来ないのか」とか「自分でやれ」とか、いつも私の不甲斐なさを責める。責められるのが怖くて、私は父に頼れなかった。
勉強だけはと頑張って成績を良くしても、それを理由にまた「生意気だ」といじめられた。
友達だと思っていた子は、その実いじめる側に告げ口をして難を逃れているだけで、直接的ないじめを助ける気などありはしない。むしろ時には助長するようなことさえあった。
男子たちは女子のあれこれは他人事としか思っていなくて、物語に登場するような格好いいヒーローは学校にはいなかった。
悲劇のヒロインぶっていて生意気だ。
色目を使って同情を誘っている。
病気に違いない、病気が感染る。
優等生ぶって告げ口している。
あることないこと言いたい放題に。それは段々と直接的な暴力へと移行していく。
助けてくれる人もいなくて、ただそんな孤独が怖くてしょうがない。
まるで、この世の何所にも自分の味方がいなくなってしまったかのような錯覚。
大人は私を見限っているの?
私が気に入らないと言うだけの理由で、何でここまで。
誰か、私の正当性を証明してよ。
いつも、いつも。
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