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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十九話 運の悪い男
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、ブラウンシュバイク公の部下だ」
会議室は静かなままだ。誰も喋らない、スクリーンの二人も微動だにしない。予測していたという事だ。
「我々は欺かれたという事だ。他の貴族は分からないが盟主であるブラウンシュバイク公と副盟主であるリッテンハイム侯の間には緊密な協力関係があると見て良い。今後はその辺りも考えなければならない」
「この際辺境星域の平定は一旦中止する。ワーレン、ルッツ両提督には本隊への合流を命じた。先ずは目の前の敵、ブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯に集中する」
妥当な判断だな。兵力の減じたルッツ、ワーレン両提督だけでは辺境星域は平定出来ない。そして本隊も戦力に余裕は無い。今は戦力を集中して貴族連合軍に当たるべきだ。
「ミュラー提督」
「はっ」
「卿はオーディンに向かえ。キフォイザー星域で敗れた以上、オーディンで騒乱が起きる可能性が有る。後方支援の本拠地が混乱するのは望ましくない。またリヒテンラーデ公よりも艦隊の派遣を要請されている。卿の艦隊を派遣すればオーディンも落ち着くだろう。至急出立せよ」
「はっ」
命令には無かったが任務にはグリューネワルト伯爵夫人の護衛も入るのだろう。前線から外された、信用されていないという事だろうか。考えすぎか? グリューネワルト伯爵夫人の護衛を命じられたと考えれば信用されていないと言うのは気にし過ぎか……。
「これまでは卿らに戦闘を任せ私は後方に居た。だが今後は私も前線に出て戦う」
初めて会議室に驚きが生まれた。皆、顔を見合わせている。
「貴族連合軍は勝ち戦続きで士気が上がっているようだ。頻りに出撃してくると聞いている。せっかく来てくれるのだ、私自ら出向いて連中を心から歓迎してやろう」
ローエングラム侯が乾いた笑い声を上げた。虚無的で何処か寒々しい笑い声だった。
帝国暦 488年 9月 25日 オーディン オイゲン・リヒター
「嫌な予感がする」
「まあそうだな、否定はしないよ、ブラッケ」
ブラッケは顔を顰めている、多分私も同様だろう。最近のオーディンは如何も落ち着きが無い。誰もが他人の顔色を窺っているようなところが有った。このポンメルンでも食事をしながら声を潜めるようなしぐさをする客が目立つ。御蔭でフリカッセを少しも美味しいと思えない。ここのフリカッセは絶品だと評判なのに。面白くない、ワインを一口飲んだ。
「如何する? 逃げるか?」
「……」
ブラッケが小声で話しかけてきた。
「騒ぎが起これば我々も危ない、いや一番危ういぞ」
「それはそうだが……、逃げて何処へ行く?」
「……ブラウンシュバイク、いやヴァレンシュタイン提督の所かな。彼なら我々を受け入れてくれる筈だ」
やっぱりそこか、というよりそこしかないというのが現実か……。
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