第十四章 水都市の聖女
第六話 俺の名は―――
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た筈の土蛇を一撃で打ち砕いた。ただの土くれとなり爆発四散し周囲へと土煙が舞い上がる。
「この程度で驚くとは―――まだまだこれからよ」
「っ―――舐めるなぁッ!!」
土煙の中から悠々と姿を現した李書文に、サーシャは声を張り上げ両手を突き出した。大地が捲り上がり、先程と同じく土で出来た蛇が現れる。その数二匹。サーシャが腕を振るい、二匹の土蛇が身をくねらせながら李書文へと迫る。
李書文との戦闘を続行するサーシャを止めようと士郎は声を上げるが、全く聞き耳を持たない。
「っ、ま、待てサーシャ。早く逃げ―――」
「何してるんだっ!?」
必死に身体を動かしサーシャに近づこうとした時肩が掴まれた。咄嗟に顔を向けた先には、顔を汗で濡らしたブリミルがいた。
「な、ブリミル?」
「サーシャが時間を稼いでいる内に早く避難するんだっ! 他は全て避難を終えた。もう残っているのはぼくたちだけだから。だから早くあなたも逃げ―――」
「っ、いや、駄目だ」
腕を取り必死に引っ張ろうとするブリミルだが、しかし士郎はソレを拒んだ。
拒否されるとは思っていなかったのか、驚きで見開いた瞳が士郎に向けられる。
「何を―――」
「今俺がここで逃げれば、サーシャが逃げられない」
本当の理由ではあるが―――真実ではない答えを向ける。それを耳にしたブリミルは、一瞬躊躇するように李書文と戦うサーシャに顔を向けるが、小さく首を振ると改めて士郎を見直した。
「っ―――それは、でも」
「俺が―――残る。奴を足止めする。だからお前はサーシャを連れて逃げろ」
何か言おうとするブリミルを、士郎はただ小さく首を振る返事を返す。
「何を、そんな身体でまともに戦えるわけがないよっ!」
「時間稼ぎ程度は出来る」
「な、んで、あなたはそこまで……いや、いけない。やっぱりそんなこと出来ないよ。これは元々あなたには関係のない戦いだ」
誰がどう見ても重症であり、もはや戦うどころか動くことすらままならないのは明白である。それでも戦おうとするその姿は、最早理解が及ぶところにはなく、自殺志願者かただ自暴自棄に陥っているとしか見えない。
しかし、ブリミルを見る士郎の瞳には、欠片も狂気は見えず強い意志の輝きに満ちていた。
「……気にするな。戦うと決めたのは俺だ」
「そんな話じゃないんだけど……はぁ、どう言っても聞かないようだね」
どれだけ言葉を尽くそうとも説得は不可能だと理解したブリミルは、小さく溜め息を吐くと頭を振った。
「ああ。済まない」
「謝るぐらいなら断らないでくれ……どうあっても避難しないんだよね」
謝る士郎に手を横に振って見せると、文句を言うように顔を顰めながら再度確認を取る。士郎はそれにふっ、と
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