第十四章 水都市の聖女
第六話 俺の名は―――
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全てが捌かれる。一つたりとて、かすりもしない。
長大な槍という近距離では逆に不利となる武器で、間近に迫った四方からのほぼ同時攻撃を捌くという神技を見せた李書文は、それを誇るでもなく新たに現れた敵に興味深そうな視線を向けた。
「っ、さ、サーシャ」
「……あいつはわたしが殺すわ。あなたは下がってて」
士郎は自分を守るように前に立つサーシャに向かって手を伸ばすが、
「ま、待て。君じゃ奴には―――」
「―――いえ。そうじゃないわね」
向けられた横顔から覗く瞳は―――拒絶を示していた。
「―――邪魔よ。死にたくなかったらさっさと逃げなさいっ!!」
「―――っ!?」
「っおお!!?」
拒絶の声と共にサーシャの手が李書文へと向けられ。それに導かれるように大地が隆起する。轟音と共に捲れた地表は長大な大蛇となり、地を滑るように身をくねらせながら李書文に襲いかかった。それだけでなく、近くに生えていた木々の枝が伸び、李書文の動きを妨害する。
大地が、木々が襲いかかってくる光景に、李書文は悲鳴でも驚愕でもなく喜色を帯びた歓声を上げた。
「精霊の力を血なまぐさい事に使いたくなかったんだけど―――あんたを殺せるのなら、そんなのもうどうでもいいわっ!!」
「呵ッ―――クカカッ!! これは驚いたッ!! まさか周囲一帯全て操っておるのかっ!! 貴様天仙の類か?! は、はは―――良いっ―――良いぞッ!! まさかここでこのような使い手と合間見えようとは思わなんだっ!!」
もはや列車が襲ってくるかのような巨大な土蛇。常人ならば足が竦んで動けないそんな脅威を前に、しかし李書文は楽しげに笑いながらそれを槍の穂先でその突撃を逸らす。手足を封じようと伸びる木々の枝は、顔も向けていないにも関わらず、まるで見ているかのような動きで危うげなく躱していく。
「なに、笑ってるのよっ―――いい加減死になさいッ!!」
「―――その粋や良し。ならば簡単に死ぬでない―――ぞッ!!」
全く捉えられないことに苛立ったサーシャは、歯を食いしばり何かを持ち上がるかのように一斉に両手を持ち上げた。それに追随して李書文を囲むように大地から壁が出現した。周囲を取り囲まれるが、ただ一方全面だけは壁はなかった。だが、そこからの脱出は不可能であった。何故なら正面からは、勢いを増した土蛇が迫ってきているからだ。
必殺の思いに、サーシャの口角が勝利を確信し僅かに持ち上がり―――
―――猛虎硬爬山―――
―――文字通り大地が揺らす震脚と共に爆薬でも使ったかのような轟音が辺りに轟く。
「な―――嘘っ!?」
素早く槍を頭上に投げた李書文が間近に迫った土蛇へと震脚と共に繰り出した一撃は、岩をも超える強度を持ってい
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