第十四章 水都市の聖女
第六話 俺の名は―――
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が欠けておるが? それにしても余りにも稚拙に過ぎる―――正直つまらんの」
「っ―――貴様を楽しませるつもりなどないッ!!」
落胆するかのように鼻を鳴らす音が聞こえた時には、既に士郎は手に持った凶器を振り下ろしていた。左手に刻まれたルーンは直視するのが躊躇われる程の光を放っている。今の士郎の疾さは、それこそ人知を越えた英雄の域に達していた。
だが―――それでも届かない領域に住む者は―――確実にいる。
「ち―――ぃ」
振り下ろした剣先には何の手応えもなし。
視界も―――気配も―――全く捉えられない。
刹那―――背筋に氷の刃を叩き込まれたかのような寒気が走り、意識するよりも先に振り切った双剣を引き―――
「―――もう良い―――死ね」
「―――ッ??!」
抑揚のない平坦な呟きが耳に声が届くと同時に、双剣が砕かれ衝撃が身体の中を揺らす。
投影とはいえ宝具である双剣を砕くそれは、これまでのモノとは次元が違った。双剣を重ねた盾に意味があったのかなかったのか―――少なくとも生きている事からなきしにもあらずだったのだろうが、それは死の訪れが遅いか早いかの違いでしかないと思われた。吹き飛ばされる中、士郎の視界に一瞬映ったものは、槍を片手に空いた拳を突き出す李書文の姿。
―――何、が?
拳を振り抜いた格好ではない。
握手でもしようかと手を伸ばしたような姿だ。何の力みもないのが傍から見てとれる。
だからこそ―――恐ろしい。
手を伸ばし軽く叩く―――人が死ぬ。
軽い所作で人を殺す事が可能な悪魔的な技術の持ち主―――魔拳士―――李書文。
「っぐぅ―――ゃぎ―――ッゴが、あ、アア、あアぁああっ―――ッオォォッ!!」
胃から逆流してくる赤く鉄の味のするソレを飲み下し―――吐き出しながら声を上げながら―――新たに投影した剣を敵に投げつける。残像を描き円盤の如く動きで挟み込むようにして双剣が李書文に迫る。一つであっても防ぐのが難しい速度と勢いで持って襲い来る剣。それが同時に全くの反対方向から迫ってくる。無造作に投げつけただけに見えて、実践で鍛え上げてきた真の実力を持った技。
「……流石にしぶとい―――だが、もういい加減貴様の相手は飽い―――」
挟み込むように迫る脅威を片手に握る槍を一振りし弾き飛ばす。弾かれた二振りの剣が李書文の脇を通り過ぎ―――
―――壊れた幻想
―――爆発した。
「ッぐ―――っ?!」
例え超絶の魔人であったとしても、大気を駆ける見えない衝撃を交わす事は不可能であった。弾かれた二振りの剣が爆発したことにより生まれた爆圧は、李書文の身体を地面へと縫い付ける事に成功した
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