第十四章 水都市の聖女
第六話 俺の名は―――
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作り上げていた。
老若男女―――老いも若いも、男も女も関係なく、心の臓を一突きにされ死んでいた。
その中に、まだ十にも満たないだろう小さな少女の姿を見つけた時―――士郎は投影した干将を振り下ろしていた。
「貴様ァッッ!!」
「ほう―――来るか」
まるで紙芝居の如く一瞬で李書文の頭上に飛んだ士郎が、渾身の力と殺意を持って振り下ろした剣は、しかしまるで事前にそう来ると知っていたかのように両手で持ち上げられた槍の腹により防がれる。だが、刃から身を守ることには成功したが、流石の李書文であっても衝撃からは逃れる事は出来なかった。口底を浸していた程度だったのが、士郎の一撃を防いだ瞬間足首まで沈み。李書文を中心に土と血で出来た沼に波紋が広がった。波紋は海底にて発生した地震により発生した津波のように外へと進むたびに大きくなり、物言わぬ骸を外へと押し流していく。
渾身の一撃を防がれた士郎は、しかし今が最大の好機であると理解する。
完全に虚を突いた一撃は防がれた。
そう防がれたのだ―――弾かれたのではない。
「―――ッ―――オオォォォォォォッ!!」
このまま決着を着ける勢いで力を込め雄叫びを上げる。
しかし―――
「―――馬鹿にしとるのか?」
「ぐっ?! ―――っが、ぁ、っは!?」
更に、と力を込めた瞬間に生まれた僅かな間隙を突き、李書文が剣に込められた力の流れを僅かにずらした。士郎は素人ではない。達人―――それも前に一流と付けても良いほどの腕前を持っている。だが、そんな士郎であっても子供のように軽くあしらわれるのは、相手が最早一流二流といった枠を超越した存在であるからだ。
力を流され李書文の後ろへと身体が飛んでいく。吹き飛ばされた身体は着陸を失敗した飛行機のように地面に叩き付けられ沼に一つの線を描きながら多量の泥を宙に舞い上がらせる。
「―――ッ、ガ!?」
「ほれ、休んでる暇などないぞ」
軽い口調で話しかけながら繰り出される槍先は、正確に士郎の身体の胸部中央―――心臓へと向かっていた。咄嗟に両手に握る剣を交差させソレの体内への侵入を防ぐ―――が、泥濘んだ沼の上ではまともに踏ん張ることは出来ず、まるで軽い布製の人形のように身体が空を飛んでいく。飛ばされた先の地面は既に死者の血と体液によって出来た沼はなく、夜露に濡れた草原が広がっていた。
「―――っお、くぅ!?」
「ふむ、まぁ、この辺りが良かろう―――さて、続きといこうかの」
地面を削り物凄い勢いで転がりながらも一気に立ち上がった士郎は、服に身体に泥をこべりつかせた姿のまま槍の穂先を向けてくる李書文を睨みつけた。
「―――ッくぅ」
「……先程からどうした? 勢いはあるが冷静さ
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