四十二話:俺が女…だと? 〜その一〜
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「いいいいいやああああああああっ!」
夕日で校舎が茜色に染まる放課後、一人のハーフヴァンパイアがグラウンドを激走していた。何でそんな状況になっているのかと言うとだ。そいつの後ろから走ってくる奴らに理由がある。俺は少し遠い眼でそいつらを眺める。
「なぜ、私もギャスパーと一緒に追われているのだ!?」
若干涙目のままギャスパーの後ろを走り続ける悪魔。恐らく俺が今まで見て来た奴らの中で最も不幸だと言いきれる女、元聖剣使いのゼノヴィア。悪魔になっても変態や俺の幼馴染に狙われるその姿は同情を禁じ得ない。今度、胃薬でも送ってやるか。
「ほらほら、走らないとロール達の餌食になるわよ」
二人が命がけで逃げている対象は俺の幼馴染にして雲の守護者である女、紫藤イリナだ。
イリナはまるで子供の様な無邪気な笑みを浮かべて二人の後ろを増殖させた『雲ハリネズミ』に追わせている。製作者としてはかなり複雑な心境だな……。
(イリナたん、どうかそのゴミでも見るかのような視線を私に言いイイイイッ!)
(串刺し……ブヒッ!)
ああ……胃が痛え。どうなってんだよ、この状況。というかイリナは結局のところSなのかMなのかハッキリしろよな。変態になるか変態のターゲットになるかで俺の対処法が大分変ってくるんだからな。あ? 俺専用のドMだと? ……なんで俺の胃を最も削る選択肢しか残ってねえんだよ……。
俺は痛み出した、胃の痛みを抑えるために新しい胃薬のふたを開けて一気にあおる。
その瓶が胃薬ではないことに気づかずに。
「がっ!?」
薬を飲んだ瞬間俺の体を焼けるように熱くなる。なんだ、まさか毒でも盛られていたのか?
だが、超直感でも気づかなかったぞ、一体何だって言うんだよ。
(相棒、知っているか? 変態とネタからは逃げられんぞ)
(ふざけんじゃねえええええっ!)
そんな俺の様子に気づいたのかデスレースを行っていたイリナ達とそれを見ていたバジル達が寄ってくる。くそ、俺は絶対に膝をつくわけにはいかねえんだ。
俺は自分の誇りの為に今にも倒れてしまいそうな体を真っ直ぐに立たせる。
すると、薬の効果が切れたのか体から熱が引いていった。
はっ、俺が薬如きに屈するかってんだよ。
「イ、イッセー……君?」
「一誠殿……であっているのですか?」
何故か俺の方を見て信じられない物を見るかのような目で見て来るイリナとバジル達。
なんで、俺への呼びかけが疑問形なのかは知らねえが恐らくは先程の俺の異常に気づいて駆けつけて来たのは間違いねえだろうから。ねぎらいの言葉をかける。
部下を労うのもボスの仕事だからな。
「俺は問題ねえ……べ、別に心配してくれて嬉しいとかはねえからな」
話していて
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