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第一章
スパイの最期
「マトリョーシカ=ラムラ少佐」
「はい」
一人のブロンドの美女が暗い部屋の中で言葉を受けていた。
「貴官の次の任務はだ」
「それは一体何でしょうか」
「カラニ共和国に潜入するのだ」
「カラニにですね」
「あの国は今現在大量破壊兵器を開発しているという情報が入っているのは知っているな」
「はい」
その言葉に応えるマトリョーシカだった。
「それは私も聞いています」
「その大量破壊兵器が何かだが」
「核兵器ではないのですか?」
こう言葉に問うマトリョーシカだった。
「それは」
「その可能性が極めて高い。それはカラニ共和国の原子力発電所で開発されているという」
「原子力発電所にですか」
「貴官にはそれを確かめてもらいたい」
言葉はまた彼に告げてきた。
「原子力発電所の中で研究及び開発を行っているのが事実ならば」
「その時は」
「破壊するのだ」
今度は一言だった。
「いいな。破壊するのだ」
「原子力発電所ごとですか」
「そうだ。その為に手段は選ばなくともよい」
言葉に厳しさ、いや冷徹さがはっきりと宿った。
「わかったな」
「わかりました。それでは」
マトリョーシカは敬礼して言葉に応えた。数日後変装した彼女は大使館から密かにカラニ共和国に潜入した。これに気付いたのは大使館のごく限られた人間だけだった。知っているのもだ。
「カラニ共和国は密かに我が国を敵視しているがだ」
「はい」
初老の男が心配し不安になっている顔で変装している彼女に声をかけていた。今の彼女は眼鏡をかけ髪の色を赤く染めている。そして目はカラーコンタクトで青から黒にしている。メイクも工夫して完全に別人になっている。スーツを着る彼女はそうとしか見えなかった。
「だからこそ大量破壊兵器、とりわけ核兵器の所有を許してはならないが」
「その通りです」
「しかし」
男はさらに曇った顔で言うのだった。
「それでも原子力発電所を破壊するなどとは」
「我が国にもこの大使館にも被害は及びませんが」
マトリョーシカは無機質そのものの声で彼に告げた。
「では問題ないではありませんか」
「それはいいのだが原発の周りにいる人達がな」
彼が心配するのはこのことだった。
「恐ろしい被害を受けるが」
「全ては我が国の安全保障の為です」
だがマトリョーシカはここでも無機質そのものの声で答えた。
「それに敵国です。何ら気にすることはありません」
「何らか」
「犠牲はつきものです」
こうも言うのだった。今の言葉は言い切りだった。
「敵国の市民がそれならばやはり気にすることはありません」
「そういうものか。それでいいのか」
「いいのです。では閣下
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